本研究課題の最終年度は、実験参加者のワーキング・メモリ容量(WMC)と、「自由度」の異なる3種類のタスク(指定日本文の訳出・6コマ漫画のストーリー説明・自由意見の主張)の産出データについて分析を行った。WMCの計測にはReading Span Test (Osaka 2002)を利用し、産出データの分析にはどれほど意味的に正確にL2で表出できているかを計測するカバー率を用いた。 「何を言うか」の表出内容の自由がどの程度定められているかという点で、タスクデマンドレベル(TDL)の異なる3種類のモノローグタイプの産出タスクを設定した。自由度が高いほど「何を言うか」の概念形成と、それを「どう言うか」との両方に注意資源を配分する必要があるため、より多くの注意資源が必要になると考えられ、TDLは高いと想定した。
1.これら3種類のタスクについて実験参加者のWMCと口頭産出(SP)パフォーマンスについて比較検証した結果、WMCの低い学習者の方が、TDLが大きくなるにつれSPパフォーマンスに影響を受けやすいという本研究の仮説は統計的には支持されなかったが、TDLが最も大きいと想定されるタスク(自由意見の主張)においてWMCの高い学習者は、WMCが低い学習者とは異なる傾向を示した。全国英語教育学会にて口頭発表を行い、中部地区英語教育学会紀要にまとめた。
2.これら3種類のタスクについて実験参加者のWMCと、オンライン処理を要する口頭産出(SP)とオフライン処理の記述産出(WP)との間に生じるパフォーマンスの差を分析した。結果、WMCの容量に関わらず3種類のタスクについて同様のパターンを示した。またサンプルサイズが少ないため統計的有意差は確認できなかったものの、SPとWPの差の平均値はWMCの高い学習者の方が小さい傾向が見られた。EUROSLA 24にてポスター発表を行った。
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