本研究では、文化背景の異なる者との国際異文化コミュニケーションの場面において、ウェブ遠隔会議システム(ビデオ会議ツール)などのICTを用いて効果的に教育に生かすことができるのか、そしてそのより良いメソッド(教育方法)について解明することを目的とし、2年間の研究期間の内最終年度には以下のような内容を実施した。3~4名の様々な国の学生をスカイプでつなぎ、ほぼ同様のメンバー(例:イギリス1名、オーストラリア1名、日本1名など)を毎週定期的にミーティングをオンラインビデオ会議にて行った。それぞれのミーティングは30分程度の時間帯にて区切って実施した。それぞれのグループは8回から15回の回数をこなすことができた。時差などの状況により、すべてのグループが当初の予定であった15回を遂行することはできなかったが、縦断的な変化を観察する上で十分な回数の談話資料は取得することができたと考えている。 それぞれのミーティングにおいて、講師役(調査者)が2種類の教育的介入を行い、それぞれの学生の交流の仕方に変化があるようにした。それぞれのメソッドにおいてどのようなインタラクションが展開したか、を分析を行った。本コーパスのビデオデータは会話分析およびマルチモーダルなインタラクション分析の手法を用いて質的に調査が行われた。考察を簡略にまとめると、従来対面教室場面やアクティブラーニング(学生の学習の活性化)を目指す教育介入の仕方としては奨励されない、比較的直接的、指令的な手法に「どのようなタスクを行うべきか」が講師役から明示的に示されたアプローチのほうが、学習者の主体生に任せて会話の展開を促すアプローチよりもより内実のある異文化交流を目的とした対話がなされ、また英語を母語としない参加者にとっても参加がしやすい状況を生み出すことがわかった。
|