平成24年度は、韓国語能力試験(TOPIK)の級別語彙表と長谷川・曹・大名(2010)で規定された教育基幹語彙の双方を参照しつつ、宮岡・玉岡・酒井(2011)の日本語の語彙能力を測定するテストの枠組みを利用して、96問からなる語彙測定用のテストを作成した。このテストを平成24年6月に福岡県および山口県にある韓国語を主専攻または副専攻とする5カ所の大学で調査を行った。調査は、90分の時間を設け、合計で61名の日本語母語話者に対して、上記の語彙能力テスト96問をランダムに配置した1冊のテスト用紙で調査を行った。加えて、読解能力を測定するテスト12問も行った。回答形式は全てマークシート方式であり、これらをマークシート読み取りツールで電子データ化を行った。電子化されたデータを項目応答理論(Item Response Theory: IRT)の分析基準に従って、大友・中村・秋山(2002)によって開発されたテキストデータ分析プログラム(T-DAP ver.2.0)を用いて、項目の適切度の分析を行った。その結果、適切度の高かった48問を抽出し、最終項目に設定した。この48問のテストデータを学習歴を基準に上位群と下位群に分け、語彙テストに設けた、品詞別、語種別のファクターを、SPSS ver.21によって、平均値の比較の分析を行ったところ、品詞別に見ても、語種別に見ても、上位群と下位群の有意差が見られた。この結果は、この語彙能力テストが、学習歴の差を弁別力できていることを示している。次いで、各ファクター間の平均値の比較を行ったところ、品詞別には差がなく、語種別には、上位群においてのみ差が見られ、漢字語のほうが固有語よりも得点が高いという結果となったが、品詞別にはテスト得点が均等に出ることが分かった。以上の結果から、本研究で開発した語彙能力テストは測定力が保証されていることが観察された。
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