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2013 年度 実施状況報告書

日本人英語学習者のリスニングと統語情報処理の自動化に関する心理言語学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24652133
研究機関早稲田大学

研究代表者

原田 康也  早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)

キーワード英語リスニング / 日本人英語学習者 / 統語形態情報処理 / 言語処理の自動化 / 心理言語学的研究手法 / 文中の非強勢要素 / 文法的冗長性 / 音声データ加工
研究概要

平成25年度については、(1) 日本人英語学習者が音声的強勢の弱い文中要素をどの程度聞きとれているか、聞き取りにおいて文法知識を活用できているかどうか検討するため、比較的平易な高校生向けの英語ニュース音声素材のディクテーション学習課題の詳細な分析を行った。また、(2) 文法知識の習得具合と、リアルタイム処理との関連について、語彙・構文について多肢選択で回答する Oxford Quick Placement Test (OQPT) とリアルタイムの音声言語処理能力を試験する Versant English Test (VET) の双方を1年度に4回実施したところ、VET スコアの大幅な上昇は見られないというこれまでの傾向を繰り返したものの、OQPT と VET の相関は明らかな上昇を見せ、継続的な英語産出訓練の効果を示す方法について重要な示唆を得た。
本研究課題では、英語学習者が文法的冗長性と統語形態論的知識をリアルタイムで英語リスニングに適用する訓練の開発をめざしているが、対象としている日本で英語を学ぶ大学生の多くが疑問文を文法的に正確に産出できないことを示唆するデータが得られたため、文の転換や再生など、いくつかの手法でさまざまな複雑さの疑問文の産出を促し、その文法的正確さを調査したところ、学習到達度が比較的高い学生であっても、疑問文の語順と形態論的な処理が正確にできていない状況が明らかとなった。ディクテーション課題や作文・会話などの訓練では疑問文を産出する機会が限定されるため、文法処理の自動化とリスニングについて検討するうえでは、疑問文の取り扱いが重要であることが示された。
こうした研究の途中経過・これまで得られた知見・今後の課題などについて、国内ならびに海外の研究会・学会などで継続的に発表を行い、フィードバックを受けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度の研究討議において、学習用の音声素材にノイズを加えたデータを学習者への提示すると、聴感上のストレスを与える可能性が懸念されるという指摘があり、平成25年度にはハイパスフィルターないしローパスフィルターなどを用いて加工する可能性について検討を加えていたが、文法的冗長性に着目させる必要性からはノイズによるマスキングないし置換が望ましいという結論に改めて至った。このため、ノイズ加工音声を用いた聴解訓練のデータ収集が当初予定より遅れているが、平易なニュース音声のディクテーション課題における critical grammatical error の分析を進めることができたため、全体としては当初の計画と比較しておおむね順調に進展していると判断できる。平成26年度については、ノイズ加工音声のリスニングと平易なニュース音声のディクテーションなどによる学習実験を繰り返し、文法的冗長性に着目するリスニング訓練の有効性を示すことを予定している。、

今後の研究の推進方策

平成26年度については、ノイズ加工をしない音声の聞き取り・ノイズ加工した音声の複数回の聞き取り・ノイズ加工をしない音声の聞き取りという形式の学習実験を複数回にわたって繰り返すことで、学習者が文法的冗長性に着目するリスニング方略を身に着けることを示唆するデータを得ることをめざす。提示した学習素材を超えてこうした方略の使用が般化するかどうか、これをどのように確認するかが今後の課題となるが、外国語の学習について実施した学習素材を超えて学習方略の般化が起こったかどうかを示す一般的な手法は確立していないため、本研究計画以降に改めて研究計画を立案・実施して、リスニング方略の定着を客観的に確認する手法について検討することが今後の検討課題として予想される。こうした研究成果について、基本的なデータ・その示唆するところ・今後の研究課題も含めて、国内の研究会・学会ならびに海外の学会などで発表を継続していく予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 日本人英語学習者の英語リスニング;ディクテーション課題における非強勢要素の聞き取りと書き起こし2013

    • 著者名/発表者名
      鍋井理沙・原田康也
    • 雑誌名

      電子情報通信学会技術報告(信学技報)

      巻: 113 ページ: 71 76

  • [雑誌論文] The use of verb subcategorization information in processing garden-path sentences: A comparative study on native speakers and Japanese EFL learners2013

    • 著者名/発表者名
      Chie Nakamura, Manabu Arai & Yasunari Harada
    • 雑誌名

      Studies in Language Sciences: Journal of the Japanese Society for Language Sciences

      巻: 12 ページ: 43 69

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本人英語学習者の言語産出における動詞の下位範疇化情報の使用:統語的プライミング実験データの質的再分析2013

    • 著者名/発表者名
      森下美和・原田康也
    • 雑誌名

      日本認知科学会第30回大会発表論文集

      巻: 30 ページ: 502 505

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本人英語学習者の言語処理と言語運用能力:Versant English Test のスコアを中心に2013

    • 著者名/発表者名
      原田康也・森下美和
    • 雑誌名

      電子情報通信学会技術報告(信学技報)

      巻: 113 ページ: 1 6

  • [学会発表] Why do you think it is so difficult for the Japanese students to ask questions in English?

    • 著者名/発表者名
      Miwa Morishita & Yasunari Harada
    • 学会等名
      The 16th Korea-Japan Workshop on Linguistics and Language Processing
    • 発表場所
      Kyung Hee University
  • [学会発表] 日本人英語学習者の構文処理:疑問文の統語形態論的複雑性

    • 著者名/発表者名
      森下美和・原田康也
    • 学会等名
      日本英語教育学会第44回年次研究集会:『グローバル人材育成』を考える
    • 発表場所
      早稲田大学
  • [学会発表] 【会長講演】質問教室:質問を促す仕掛け

    • 著者名/発表者名
      原田康也
    • 学会等名
      日本英語教育学会第44回年次研究集会:『グローバル人材育成』を考える
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 招待講演
  • [学会発表] 技術としての英文法 (3):リスニングにおける文法知識の活用調査

    • 著者名/発表者名
      原田康也・鍋井理沙
    • 学会等名
      第90回次世代大学教育研究会
    • 発表場所
      沖縄産業支援センター
  • [学会発表] Use of Verb Subcategorization Information in L2 Sentence Processing

    • 著者名/発表者名
      Chie Nakamura, Manabu Arai & Yasunari Harada
    • 学会等名
      Workshop on Linguistic Analyses of Foreign Language Learning: Automatization in Real-Time Comprehension and Production
    • 発表場所
      Waseda University
  • [学会発表] 日本人英語学習者の英語リスニング;ディクテーション課題における非強勢要素の聞き取りと書き起こし

    • 著者名/発表者名
      鍋井理沙・原田康也
    • 学会等名
      電子情報通信学会思考と言語研究会・早稲田大学情報教育研究所共催研究会
    • 発表場所
      早稲田大学
  • [学会発表] 日本人英語学習者の言語産出における動詞の下位範疇化情報の使用:統語的プライミング実験データの質的再分析

    • 著者名/発表者名
      森下美和・原田康也
    • 学会等名
      日本認知科学会第30回大会
    • 発表場所
      玉川大学
  • [学会発表] Syntactic Priming Effects Revisited: Reconsidering Potential Priming Effects in Interactional Tasks by Japanese EFL Learners

    • 著者名/発表者名
      Yasunari Harada & Miwa Morishita
    • 学会等名
      Cross-linguistic Priming in Bilinguals: Perspectives and Constraints
    • 発表場所
      Radboud University
  • [学会発表] Priming of an Initially Adopted Structure in L2 Processing

    • 著者名/発表者名
      Chie Nakamura, Manabu Arai & Yasunari Harada
    • 学会等名
      19th Architectures and Mechanisms for Language Processing (AMLaP 2013)
    • 発表場所
      Aix-Marseille University
  • [学会発表] 日本人英語学習者の言語処理と言語運用能力:Versant English Test のスコアを中心に

    • 著者名/発表者名
      原田康也・森下美和
    • 学会等名
      電子情報通信学会思考と言語研究会・MAPLL 2013 共催研究会
    • 発表場所
      関西学院大学梅田キャンパス
  • [学会発表] Syntactic Priming of the Initial Analysis in L2 Comprehension: Evidence from a Self-Paced Reading Study with Japanese EFL Learners

    • 著者名/発表者名
      Chie Nakamura, Manabu Arai & Yasunari Harada
    • 学会等名
      言語科学会 第15回年次国際大会 (JSLS2013)
    • 発表場所
      活水女子大学

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公開日: 2015-05-28  

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