研究課題/領域番号 |
24652137
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
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キーワード | 農業・牧畜境界地帯 / モンゴル帝国 |
研究概要 |
本研究は、東ユーラシア世界で見られる草原世界と農耕世界との境界域、すなわち「農業・牧畜境界地帯」の歴史的性格・特質が、ユーラシア全域で普遍的に見られるものであるのかを検証していくことを目的としている。 2年目の平成25年度は、上記の問題関心にもとづき、特にヨーロッパ東方における遊牧文明と農耕文明の接触・対立・融合の様を明らかにしつつ,このような異質な両文明間に位置した空間の検証を行うことを目的とした。 具体的調査として、夏季に東部ユーラシアを研究対象とする森部・船田(連携研究者)が、ハンガリー史の専門家である山本明代(連携研究者)の協力を得て、ハンガリーの草原地域の景観調査を実施し、あわせてブダ・ペシュトで関連情報・資料を収集した。特に、ハンガリー本国において、彼ら自身のアイデンティティと遊牧民とはいかなる関係にあるのか、またハンガリー歴史学界と自国史の形成における遊牧民の位置づけはいかなるものがあるのか、という点を重点的に調査した。また、かつてハンガリーに侵攻したモンゴル帝国の関連史跡をめぐり、これに関する若干の景観調査も行った。 その結果、得られた情報として、現在の「ハンガリー史」の枠組の中に、草原世界と農耕世界の間から誕生したという「意識」や、あるいは遊牧民がハンガリー(マジャール)の先祖であるという歴史認識が、極めて低く、あるいは否定されていることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハンガリー調査では、景観調査を通じ、ユーラシア西部における草原世界と農耕世界の邂逅の場を実見することができ、今後の研究の布石をうつことができた。また、現代ハンガリー知識人の歴史観を、東ユーラシア史との比較の中で聞くことができた。 ただし、夏季調査を実施した後、予算と時間の関係で日本における会合が開催できず、メールでのやり取りに終始している。そのため、各人の研究成果の情報を相互に直接聞いて総合的に判断する機会を得られなく、当該年度の総合的なまとめを行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向け、ロシア南部のスキタイおよびキプチャクハン国関連の遺跡の調査を通じ、南ロシアにおける遊牧民と農耕民の関係を検証する予定を立てていたが、2014年のウクライナ情勢が不安定であるため、調査対象をセルジューク朝およびイルハン国とし、イラン調査に切り替え、西アジアにおける遊牧民の支配と農耕文化のその支配受容の様相を検証することとする。そのうえで、3年間の調査・研究を回顧し、今後の課題を整理する。
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