研究課題/領域番号 |
24652165
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
柳井 雅也 東北学院大学, 教養学部, 教授 (00200527)
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研究分担者 |
増子 正 東北学院大学, 教養学部, 教授 (80332980)
出口 敦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70222148)
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キーワード | コミュニティビジネス / 再生可能エネルギー / 木質バイオマス / 地域福祉 |
研究概要 |
当該年度の主な計画は、①「社団法人多賀城震災復興まちづくり会社」(以下、まちづくり会社)の事業分析、②再生可能エネルギーの実用化に向けたプラン作り、③介護・福祉に関してまちづくり会社(コミュニティビジネス:以下CB)をベースにしたコミュニティづくりを予定していた。 ①について、「まちづくり会社」のビジネスモデルを解明を行った。具体的には、設立の経緯、障がい者雇用の考え方、商品開発(ハーブ等)、コスト管理、利益の社会還元等について聞き取り調査を行った。一般にCBは商品開発力に乏しく、またコスト管理も十分なされていない場合が多い。当該の「まちづくり会社」は、この点をビジネスとして管理・運営している。これを明らかにすることが重要(他のCB運営)であると考えた。②欧米を中心とするスマートシティの先行事例(オーストリアのギッシングや岡山県真庭市等)の諸特徴を整理・分析し、東日本大震災の被災地である多賀城市の参考とした。特に、再生可能エネルギーの中で、有望なエネルギー源に焦点を当てて分析を進めた。分析のポイントはエネルギー源調達の採算性、産業波及効果(地元雇用の創出効果)等に絞った。③については、ノルウェーの地域福祉を調査した。特にこれをCBの観点からみた場合、住民参加の実態や取組、事業採算性の点で参考になることを抽出した。その上で、多賀城市の地域福祉施策の検証と課題の指摘を行う。CBづくりに関しては、「まちづくり会社」と意見を交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①「まちづくり会社」については「6次産業化と地域の活性化」『日本経済と地域構造』山川充夫編著,原書房,2014にて成果を発表している。その主な内容は「まちづくり会社」が、障がい者の雇用創出をビジネスの観点から採算の取れる事業とし、利益の還元を行いながら、強い競争力を持った商品(ハーブ等)生産に成功していることが分かった。また、販路の開拓を行う事で、全体のバリューチェーンを構築していることも分かった。 ②については、再生可能エネルギーについて様々な可能性(立地条件、資源調達・採算等)を検討し、木質バイオマス事業が最適と判断した。理由は、森林資源の豊かな東北地方の被災地で取り組みやすい分野である為である。しかし、多賀城市としてこれを考えた場合、森林資源の賦存地域からの距離が、損益分岐点といわれる約20kmより離れていることなど、実現性に問題があることが分かった。しかし、この分析の過程でコジェネレーションの活用が効率的エネルギーの利用法であることも明らかになった。これをCBと結びつけながら、如何にまちづくりや産業波及効果につなげていくかが課題であるといえる。 ③については、柳井雅也・増子正「宮城県多賀城市における参加型地域福祉の形成について ── オスロ市の福祉施設の事例を参考に ─」『教養学部論集』東北学院大学教養学部,167号に一部の成果を発表した。ここでは、多賀城市の地域政策と比較しながら、高齢者が一方的に受益者になるのではなく、ボランティアとして自ら働く機会(雇用も含む)を保障する。そのような「助け合い」による地域福祉の推進を指摘した。CBとの関係でいえば、これをビジネスとして如何に取り組んでいくかが大事である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、研究概要①~③の総合化と提案が重要と考えている。「まちづくり会社」をコアに、引き続きその事業動向(障がい者雇用、地元企業との連携等)を押さえていく。また、エネルギー確保の視点からはコジェネを導入した際の事業展開(コスト、新たな事業等)の可能性も検討していきたい。地域福祉の観点からは「まちづくり会社」の事業も含めて、住民参加の可能性を引き続き検討していく。 こうして、ともすればハード偏重のスマートシティ構想に対して「多賀城型」モデル(人材活用等のソフト重視)を提起していきたい。また調査対象としては、スマートシティモデルの先進国ドイツの都市と中小規模の都市で先進的といわれるルクセンブルクを調査して、多賀城市への参考とする。コジェネ事業についてもドイツの先進的企業の資料収集に務める。 最終的には、まちづくりの観点から、①~③の連携の在り方を提言していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
27,101円は、ノルウェー調査における訪問先の都合で滞在日数を短縮したためである。 次年度は、ドイツにおいて調査を予定しており、全額の執行を予定している。
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