研究課題/領域番号 |
24652166
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
近藤 章夫 法政大学, 比較経済研究所, 准教授 (60425725)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 経済地理学 / 産業集積 / 研究開発 / イノベーション |
研究概要 |
研究開発とイノベーションの地理的側面を分析するために、主に3点のステップワイズな研究方法を採用した。第1に、研究者向けのIIP特許データベース(知的財産研究所)をテキストエディタによって編集し、民間の特許データベースを補完的に用いることによって、分析に必要な属性を整理して数十万オーダーの特許データベースを作成した。第2に、作成したデータベースの出願人氏名と公開されている社内技法や論文データベースの著者名とをマッチングさせ、所在地情報を特許データベースに付加する作業を行った。第3に、大学・公的研究機関・主要企業の公刊情報を用いて、特許に記載されている属性の精度を上げて、共同研究や産学官連携の動向、出願人と所属組織の関係などから、研究所の役割や既存集積との関係などの視点から研究開発活動の地理的側面について分析可能性を展望した。このうち、今年度は第1の点を重点的に行い、来年度以降に残りの研究方法にチャレンジする計画で進めた。 今年度の成果は、特許の経済分析および特許と集積の関係について文献調査を行い、方法論の整理と斯学への導入可能性について検討し、その結果をふまえて地理的側面の考察に資するデータセットの加工編集作業を進めたことである。その際、特定の技術領域に絞り、具体的には半導体デバイスの「メモリ技術」、薄型パネルディスプレイの「表示装置技術」などの基幹電子部品技術と、それらの統合製造技術と情報処理技術に焦点をあて、大学・公的機関・主要エレクトロニクス企業に所属している出願人をデータベース化する目処をつけた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IIP特許データベースを用いて地理的側面の考察に資するデータセットの加工編集作業が本研究で最も重要な基盤作業であるが、特定の技術領域に絞って、企業の「名寄せ」あるいは出願人の属性付加を予定どおり行うことができ、研究計画に沿って順調に進展している。ただし、特許データに含まれる数多くの情報については未だ十分に活かせておらず、これらの情報を活用するには研究計画で想定していた以上の二次情報が必要であり、特許の地理的側面としてどこまでの情報付加を求めるのかについては検討中である。特許属性への理解をさらに深める必要があるとともに、出願人サイドからみた特許出願戦略などにも配慮した形で分析を行っていく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度の特許の加工編集作業とアンケート調査およびヒアリング調査をふまえ、集積やイノベーション活動の分析に資するデータベースの精緻化を進める。ただし、その後の進捗状況によって平成25年度も同様の加工編集作業を繰り返す必要が生じる。特に、社内技報や論文データベースは膨大にあるため、データの精緻化を進めていくうえで追加作業が発生することが見込まれる。 以上の作業に加え、平成25年度に中心となる研究計画は以下の2点である。 1)IIP特許データベースでは抜けている属性として「引用文献」や「他特許との関係」があげられる。これらの特許間関係については全てを分析することは困難ではあるが、例えば技術領域で絞る、特定の機関や事業所で絞る、特定の地理的範囲で絞る、などによって部分的な分析は可能である。 2)上記の作業によって作成した特許データベースを用いて、定量的に研究開発活動の実態分析を以下の点を中心に行いたい。 ①出願人(研究者・技術者)の所在地データセットから、研究開発活動の地理的集中化が生じているのか否か、既存集積の関係が見られるのかどうか、特定の事業所から継続的に成果が生み出されているのか否か(イノベーション活動の「収束」か「拡散」か)、などの問題意識に応えられるようなデータ分析を行う。 ②1つの特許に複数の所属先があるデータセットを用いて、共同研究の動向や共同研究における距離の含意、産学官連携などの進捗状況などをデータ分析から試みる。特に、特定の機関や場所で研究開発活動が進むほど新たなイノベーションが生じているのかという問題意識に沿って定量的な把握の可能性を探る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
データベースの加工編集およびそれらの分析ソフトウェアが主な研究費の使途である。具体的には、特許データベースへのアクセス料金、特許解析において被引用関係の分析が可能となる定量化ソフトウェア、などがあげられる。その他、ソフトウェアのアップデート、資料収集費、学会出張費、研究成果の発表準備費(校閲費等)などを予定している。
|