日本には道教は正式には伝わらなかった。にもかかわらず、日本中世の文学・習俗・生活には長生・神仙・易学思想などに多分に道教的発想が認められる。本研究の代表者は、それらが古代から日本に伝わっていたものか、中世になって伝来したものかを解明しようとした。そこで、本研究では、基礎作業として、中世から近世にかけて生成・発展した諸芸能について、資料から道教的要素の抽出を行った。その結果、中世以降に発生した芸能に見られる道教的要素の多くは、古代から受け継がれたのではなく、中世に活発となった人的交流の結果によるものではないかとの見通しを得ることができた。
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