研究課題/領域番号 |
24652172
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
中西 裕二 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50237327)
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研究分担者 |
佐藤 弘夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (30125570)
白川 琢磨 福岡大学, 人文学部, 教授 (70179042)
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キーワード | 民俗文化 / 中世仏教 / 顕密仏教 / 民俗芸能 / 坊集落 |
研究概要 |
平成25年度は2回の研究会を実施した。研究会では、平成24年度に現地調査をおこなった大分県国東半島の修正鬼会、福岡県糸島市一貴山集落、山形県寒河江市の慈恩寺等について、研究分担者の調査研究に基づいた報告をおこない、またゲストスピーカーを招き、中世仏教と日本の民俗文化の関係に関する事例報告をしてもらい、フォークロアパラドックスの事例の広がりについて検討した。事例を総合して考えると、中世仏教(顕密仏教)に基づき複数の坊により形成された寺院=村落が日本中にかなり広範に見られること、近世の幕藩体制下の宗教政策が、この種の民俗文化の改編と存続に大きな影響を持つことが明らかになりつつある。例えば旧水戸藩領、旧岡山藩領のように、17~18世紀に神仏分離、祈祷系仏教の排除、それに伴う宮・社の整理をおこなった地域と、中世仏教に基づく寺社組織の朱印地を多く保障していた山形藩などの差異はかなり大きく、これが近世以降の民俗文化に大きく影響したと言うことができる。しかし、近世に寺社整理をおこなった地域においても、中世仏教の影響が姿を変え存続していることは素直な驚きであった。 平成26年度に予定している国際学会でのパネル報告についても検討をおこなった結果、平成26年8月末に上海でおこなわれる、国立歴史民俗博物館と華東師範大学との合同国際シンポジウムにおいて、日本の民俗文化の理解における中世仏教のもつ意義についてパネル討議を行うことになり、その内容について検討がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、まず、日本の宗教民俗の領域において、民俗社会の外部の宗教的状況が直接「民俗宗教」の領域に影響を及ぼし、現在見られる「宗教民俗」の基層部分を形成したという仮説に基づいているが、その問題設定の共有、その視点での宗教民俗文化の事例収集が順調に進んでいると言える。 これらの諸事例を合わせ、今後これらの事例をめぐる地域史というミクロな視座と、広く宗教史・思想史というマクロな視点を考察に加えることで、本研究課題の鍵概念である「フォークロアパラドックス」を、日本の民俗文化形成史の中に、より確固とした仮説(abduction)として位置づけることが可能だと考える。 今後の課題としては、民俗文化形成におけるフォークロアパラドックスのもつ意義を、一つには理論的に整序すること、日本の民俗文化の多様性との関係性において位置づけるモデルを提示することであろう。これらの諸点については、次年度(最終年度)におこなわれる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2年目が過ぎ、次年度が最終年度を迎える訳であるが、そこでは、①これまで収集した事例を整理し、フォークロアパラドックスという視座がもつ意義を文化史的視点から再構築すること、②それらの成果を、国内の学会、及び国際的な学会・研究集会において問うこと、③これらの研究を世に問うため、本研究課題を書籍の形式にまとめ、世に問うこと、の3点を進めていく。しかし、本研究課題の分担者数は3名、連携研究者が1名と極めて小規模で研究を進めているため、来年度本研究課題の助成期間が終了後も、この視座での宗教民俗研究をどこかで継続することが必要であろう。その点も見据え、最終年度の研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究代表者・研究分担者がそれぞれ現地調査をおこなう機会が予定より少なくなったことから、次年度使用額が発生した。 次年度に山形県寒河江市、大分県国東市をはじめとする日本各地の坊集落において現地調査をおこない、また次年度には海外での学術シンポジウムを予定しており、それらの中で予算執行をする予定である。
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