研究課題/領域番号 |
24652172
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
中西 裕二 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50237327)
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研究分担者 |
佐藤 弘夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (30125570)
白川 琢磨 福岡大学, 人文学部, 教授 (70179042)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 民俗学 / 宗教 / 中世仏教 / 顕密仏教 / 修験道 / 祈祷 |
研究実績の概要 |
本研究は「フォークロア・パラドックス」という概念を用いつつ、日本の宗教民俗文化の形成過程を再考し、かつ新しい日本文化史の枠組みの端緒を探る試みである。本研究では、古くから伝承されると考えられる、日本の宗教的な民俗文化を研究すればするほど、そのデータが示す内容は本質的な「常民の文化」像ではなく、宗教的な民俗文化の史的形成過程ではないか、という仮説を立てた。つまり、宗教民俗文化を歴史的に遡及するほど、その起源は民俗社会の外部の宗教的枠組みと関連する傾向がある、ということである。これは、従来の日本民俗学による宗教民俗研究と矛盾するため、これを「フォークロア・パラドクス」と概念化し、日本各地の宗教民俗文化の再検討をおこなった。そして、宗教民俗の基層には中世的世界観が濃密に反映され、それは民俗社会外部の顕密仏教・中世仏教の影響を強く受けている点を明らかにした。 研究期間全体を通し、各年度で研究会を複数回開催し、また民俗文化に関する現地調査を山形県寒河江市、大分県豊後高田市、福岡県糸島市、福岡県添田町などで実施した。そして最終年度は、研究代表者、研究分担者、連携研究者が実施してきた研究内容の相互検討を進め、2014年8月30日、中国・上海の華東師範大学で開催された国際シンポジウム「記憶の場としての東アジア」(華東師範大学社会発展学院民俗学研究所と日本の国立歴史民俗博物館の共催、中国民俗学会が協賛)において、本科研のテーマで一つの分科会を設け報告をおこなった。本シンポジウムでは、本研究課題で示した史的モデルの妥当性が高いことを確認し、そして従来の宗教民俗の形成過程モデルを脱構築した後、民俗学、日本宗教史、日本文化史と言った領域に対し、新しい史的モデルが提示できる可能性を検討した。この内容を軸に、今後研究成果を出版する予定である。
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