研究課題/領域番号 |
24653002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小峯 茂嗣 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任助教 (80510081)
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キーワード | ルワンダ / 和解 / フィールドワーク |
研究概要 |
平成25年11月、ルワンダにおける現地調査を実施。1994年に発生したジェノサイド(大量虐殺)の加害者および被害者40名への聞き取り調査を行った。聞き取り調査の目的は、「隣人が隣人を殺した」と言われる暴力を経験した農村社会において、ガチャチャ裁判が、加害者と被害者の人間関係の変化にどう作用したかを聞き取ることであった。 被害者たちはおおむね、殺害された家族の最後について知ることができ、加害者の自白に基づいて見つけ出すことができた遺体を埋葬することができていた。その点については満足しているようであった。そして人間関係の修復について、被害者と加害者との日常の交流をたずねると、大半が相互に往来をしているとのことであった(一方が遠隔地にいるなどの場合もあった)。食糧や調味料の貸し借り、結婚式の際の手伝いや食器を貸し借りするといったものがあった。加害者、被害者の双方とも、このような往来は、ガチャチャの前にはあり得なかったと言う。双方が相手側を恐れていたとのことである。実際にルワンダでは、サバイバーによる加害者やその遺族への報復や、収監された加害者の家族によるサバイバーへの報復が行われてきた。ガチャチャという機会を経て、このような疑心暗鬼の関係に変化が生じたことが見うけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は現地でのフィールドワークを行う上での協力者との調整に困難をきたしていたが、調査地でインフォーマントとの間を取り持つ協力者を得ることができ、順調に調査を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査によれば、加害者側も、恐れを感じたり、良心の呵責にさいなまれたりする者が少なくない。彼らはみな、ガチャチャ裁判のおかげで被害者との関係が再開できたことを前向きにとらえている。他にもジェノサイド加害の容疑で長年にわたって収監されていた者が、ガチャチャでの住民の証言によって冤罪を晴らすことができたというケースもあった。 それではルワンダは着実に和解に向かって進んでいるかというと、疑問もはさまざるを得ない部分はある。話を聞いたサバイバーすべてが、ガチャチャの場で謝罪をした加害者をゆるしたと言った。しかし「なぜゆるせたのか?」という問いかけに対しては、ほぼすべてのサバイバーが「それが政府の政策だから」という返答をした。ガチャチャの場で謝罪されたら受け入れて、ゆるさねばならず、それは国の命令だと認識されているのである。03年に実施した調査時は、多くの被害者が「キリスト教の教えに基づいてゆるす」と答えていたが、今年度の調査で、同じように答える人は、わずかにとどまった。この変化は、近年の強権的な政権運営とも軌を一にしている印象がある。政府が「ゆるせ」という方針を立てたら、人々はそれに従わなければならないという社会状況の一片が垣間見える。 しかしながらおおむね、加害者も被害者にもガチャチャ裁判の評価は好印象であった。今後の研究は、ガチャチャに参加しなかった人間への聞き取り調査を実施したい。そのような者たちは、ガチャチャに否定的な人間といえる。彼らが否定する理由を聞き取り、現地の人が考えるガチャチャの否定的な側面を検証していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
現地調査を踏まえ、さらなる経年変化を追跡する必要が生じたため。 現地調査の継続。
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