本研究は、1994年にアフリカ中央部ルワンダ共和国において発生したジェノサイドに関するものである。ジェノサイド後のルワンダにおいては過去の人権侵害をさばき、民族間の和解を進めることを目的に、対話型かつコミュニティベースの法廷「ガチャチャ」が各村に開設された。本研究は、このガチャチャ裁判を経たのちのコミュニティにおける加害者と被害者の関係性の変容についてインタビューを行、ガチャチャ制度の評価を行うことを主眼に置いている。 平成26年度は、4月、11月、27年2月に現地調査を行い、ジェノサイドの生存者とジェノサイドに加担した者との双方に対するインタビュー調査を実施することができた。調査協力者たちは、おおむね双方ともガチャチャのポジティブな側面について語ってくれた。具体的には政府の監督下で安全に対話ができたこと(双方とも報復の恐れを抱いてきた)や、生存者は亡くなった家族の遺体の場所を知ることができて埋葬できたこと、また加害者についても謝罪の機会を得られたことなどを肯定的に語るものが多かった。一方でジェノサイド後に転居したり、加害者が逃亡してしまったために、そもそも和解する相手が存在しなかったりする例もあった。 このようにガチャチャに参加した人々はかなり率直に自己の経験とガチャチャへの前向きな評価を語ってくれた。一方でガチャチャの場で自らの罪を認めず、収監されたままの加害者も存在している。そのような立場の人々にとってのガチャチャの評価と言うものも今後は調査していく必要性を強く感じ、次年度以降の課題としたいと考える。
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