本研究は、米国の租税回避否認法理の形成過程を研究し、わが国への導入の可能性を探ることを目的とする。法理のはじまりとされるGregory事件判決は、取引が租税回避目的で行われていても法解釈に影響しないというわが国でも判例・学説上みられる考え方を前提に、自由法論の影響を受けた目的論的解釈を行ったものであり、わが国の外国税額控除余裕枠りそな銀行事件最高裁判決(平成17年)などと同様の手法によるものであると分析した。Gregory判決は、1950年代までの範囲でみると、その後組織再編事件や法人格否認事件で引用され、特に租税法上の法人格否認事件で引用される中で、射程も広がり、内容も明確化されていった。
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