憲法理論、国家論および憲法改正等に関する近年の文献を手がかりに、憲法設計の理論と技法の諸要素の抽出と分析を行った。また、憲法の設計理論の全体構想の再検討を実施した。これらの作業は現在なお継続中であるが、現時点での研究結果は、憲法の設計理論の今後の研究の重要な土台になると考える。 また、憲法設計のプランニングと具体的な設計に関する研究を実施した。その結果、憲法設計に際して、以下の点などに留意すべきことなどが明らかになった。 憲法設計のプランニングに関しては、まず、当該憲法の目的が問題となる。この点、憲法の目的は、立憲主義の理解に大きく規定されるが、それが憲法の目的の如何に直結するわけではない。また、憲法の目的は、常に一つではなく、複数の目的をもつ憲法もありうる。さらに、プランニングに際しては、憲法の仕様が定められなければならない。憲法の仕様については、憲法の機能と規範力が問題となる。憲法の特性である法的機能の多様性にも十分に配慮した上で、当該憲法の目的に適う法的機能を実際に発揮しうる規範力を備えた憲法を設計することが求められる。 憲法の具体的設計に際しては、建築設計における基本設計と詳細設計の区別を参考にすることが有用である。憲法設計の場合、基本設計に属するのは、憲法の適用範囲、公私の区分など憲法が適用される法空間、基本原理、国家の構造、憲法全体の構成などの設計である。これに対して、詳細設計に属するのは、国家機関の組織と権限、相互関係、国民の権利義務、改正、憲法保障などである。 なお、立憲主義憲法は硬性憲法であるのが通例であるから、一般に、憲法は、頻繁な改正を前提として設計することはできず、社会の変化にある程度柔軟に適応可能なように設計されなければならない。
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