ドーピング規制の通常の形態では、私的団体であるスポーツ団体が、自らが主催する大会に参加を希望する競技者に対し、大会参加の条件としてドーピング規制を受け入れることを求め、私人がそれに同意することにより、ドーピング規制が適用されることになる。すなわち、契約法的構成であり、国家法はその契約的関係の基盤としての役割を果たすにとどまる。そこから、私的自治による国際秩序の構築が主張されてきた。ところが、近年、ドーピング規制の進展に伴って、国家からの反撃とも言える事態が進展しつつある(とりわけドイツのPechstein事件)。これは、私的自治規範による国際秩序構築の限界とも言え、今後の動きが注目される。
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