研究課題/領域番号 |
24653017
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
酒巻 匡 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50143350)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 刑事訴訟法 / 刑事上訴審 / 控訴 / 事実誤認 |
研究概要 |
本研究は、わが国の刑事上訴審による「事実認定審査」の在り方について、戦後60年間暗黙のうちに確立していた審査手法に根本的な疑問を投げかけ、現行刑事訴訟法に本来内在していた、あるべき「事後審査」手法を、具体的かつ明晰な法解釈理論として呈示しようとするものである。24年度においては、実施計画に記載したとおり、既存の公刊邦語文献・裁判例についてほぼ網羅的な読解を完了するとともに、裁判員制度施行後の第一審判決に対する控訴審の事後審査の動向を具体的に把握するため、東京高等裁判所刑事部の部内研究会に参加・関与する機会を得て、控訴審担当裁判官や審査対象となった第一審判決担当裁判官と現在進行中の、裁判所部内における、控訴審事実誤認審査の在り方を再考しようとする議論の状況につぶさに接することができた。 これと並行して、比較法研究の素材となる、英米独仏の刑事上訴審に関する基本的な書籍・文献の収集と読解を継続した。また、近時刑事控訴審の在り方とくに第一審が裁判員裁判であった事件の控訴審の審査の在り方について、具体的または一般的に言及したと理解できるいくつかの最高裁判例について、その意味内容を厳密に理解・整理・画定するための分析的読解を行った。 以上の研究活動を踏まえて、24年度末から、刑事控訴審における事実認定審査の在り方一般、第一審が裁判員裁判であったことと控訴審の事実認定審査の在り方との関係の有無、及びこれらの法解釈問題に対する最高裁判所の判例テキストの含意を素材とした、比較的大規模な研究論文の執筆構想を開始した。この研究論文については、25年度秋までに完成し、25年度後半までに刊行する予定である。 なお、前記のとおり初年度である24年度においては、もっぱら文献読解と裁判官との議論に集中したため、本研究課題に直接関連する公刊論文はない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前記「研究実績の概要」に記載のとおり、平成24年度の研究計画は、ほぼ調書記載の研究実施計画に即して順調に進行した。また、現実に最高裁判所の判例で、本研究課題に直接密接に関連する法律問題への新たな動きが認められたため、研究の重点をその分析・検討に移したが、研究期間1年目に想定していた、素材の収集と読解は日本語文献については、ほぼ計画通りに進展している。 外国法関連文献の収集はいまだ途上であるが、アメリカとドイツの関連資料のうち基本的なものについては、把握し、現在読解中である。この点もほぼ計画通りに進展しているといえよう。
|
今後の研究の推進方策 |
1 研究実施計画に記載したとおり、研究期間の2年目にあたる平成25年度には、この期間内のわが国の上訴審審査裁判例の収集分析、東京高等裁判所判事や司法研修所教官を中心とする刑事実務家との意見交換ならびに立法史・比較法制度に関する資料の収集分析を、平成24年度同様に継続する。これについて、次年度設備備品費・国内出張旅費等を使用する。 2 前記のとおり平成24年度に構想した研究論文の着想を進展させ、可能であれば平成25年度中に論文を脱稿して、法律雑誌に掲載することを目指す。 3 比較法制度分析の過程で、実務技術的事項や、法制度の運用実情について、文献調査のみでは把握しがたい事項が生じた場合には、短期間、海外調査を実施する可能性がある。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定研究費は、平成24年度中に発注した外国図書で現在未着のものについて、平成25度請求研究費と併せて、支出する予定である。
|