研究課題/領域番号 |
24653018
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土井 政和 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30188841)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 刑事司法 / 福祉 / 出所者就労支援 / 地域生活定着支援 / 地域社会内訓練事業 |
研究概要 |
本研究では、刑事司法制度における犯罪防止に向けた福祉的援助を「福祉連携型刑事司法」(仮称)という観点から再構成し、できる限り刑罰に依存しないで犯罪を防止する社会の実現に向けて刑事司法の在り方を根本的に再検討することを目的とする。その方法として、平成24年度は、以下の調査を行うことにしていた。①実証的研究として、法務省と厚労省の連携、経済団体や福祉団体など民間団体等の活動や相互の協力によって進みつつある福祉的援助措置について、その現状と成果及び課題を調査検討する。②比較法的研究として、北欧(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)、イタリア、ドイツ、イギリスにおける刑事司法と福祉制度との関係について調査する。 ①については、定着支援センター(大阪、滋賀、長崎)、社会福祉法人南高愛隣会、のぞみの園などの施設、並びに、福岡県就労支援事業者機構、出所者就労支援会社(ヒューマンハーバー)などを訪問しヒアリングを行った。②については、スウェーデンの以下の施設を訪問した。Cris(クリス)、Basta(バスタ)、Crami(クラミ)、サムエル社、ストックホルム保護観察所、コールモーデン開放刑務所、ハル重警備刑務所などである。そこで、特に、執行猶予者や刑事施設出所者等の就労支援や相互扶助などの実態を聞くことができた。出所者に対する社会の対応は日本とあまり変わらない印象を受けた。就労先を見つけるのは困難であり、継続的な定職を得ることはさらに難しい。そのため、Cramiのような官民協働の就労支援団体が活動している。その活動報告書が近いうちに発行される予定で、入手次第送付を受けることになっているので、その検討も行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち、実証的研究については、「刑事施設等への社会福祉士・精神保健福祉士の配置、福祉事務所やハローワークと刑務所及び保護観察所との連携、出所者就労支援事業、地域生活定着支援センター設置、社会福祉法人による事業(知的障害者、高齢者)、全国就労支援事業者機構の設立など諸施策の現状を調査し、その課題を明らかにする」ことにしていたが、上記概要でも述べたように、すでに、定着支援センター(大阪、滋賀、長崎)、社会福祉法人南高愛隣会、のぞみの園などの施設、並びに、福岡県就労支援事業者機構、出所者就労支援会社(ヒューマンハーバー)、福岡刑務所などを訪問し、ヒアリングを行った。 比較法的研究としても、上記概要のとおり、スウェーデンの以下の施設を訪問した。Cris(クリス)、Basta(バスタ)、Crami(クラミ)、サムエル社、ストックホルム保護観察所、コールモーデン開放刑務所、ハル重警備刑務所などである。その成果については、次年度において、紀要等に公表する予定にしている。 理論的研究については、刑事司法と福祉の関係について、これまでの自説を整理検討し、新しい動向を踏まえて理論的に再構成する作業を始めている。 以上により、研究計画は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
国内調査に関しては、以下の調査を行う。 ①地域生活定着支援センターの活動は地域ごとに特徴があり、すべてが長崎方式で進んでいるわけではない。そのため、地域的特徴のあるセンターを選定し、訪問調査を行うことにより、相互の比較検討を行い、多様なあり方がありうることを明らかにする。 ②出所者就労支援事業者機構の活動についても同様の状況にあることから、福岡以外の地域での活動状況について調査を行う。 ③同時に各弁護士会や法テラスの活動の中で、刑事司法と福祉の連携を図り成果を上げた経験についてヒアリング調査を行う。 外国調査に関しては、イタリアまたは韓国の調査を行いたい。イタリアに関しては、矯正処分監督裁判所及び施設外刑執行処遇支援事務所の調査を行う。判決と刑の執行との間に位置し、判決裁判所が言い渡した刑の具体的な執行方法を検討する矯正処分監督裁判所の活動は興味深い。また、韓国については、起訴猶予段階で多様な付随的プログラムをもっており、参考に値する。 理論的研究としては、引き続き、刑事司法と福祉との連携に関する文献の収集整理を行うとともに、その分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
①地域定着支援センター、弁護士会、法テラスの訪問調査、学会出席など国内旅費が必要である。 ②外国調査のための渡航費、謝金などが必要であるが、次年度の使用可能金額が限られているため、イタリアか韓国かいずれかに限定せざるをえないかもしれない。その場合は、訪問できなかった国については、インターネットなどでの情報収集に努めたい。
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