研究課題/領域番号 |
24653021
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
肥塚 肇雄 香川大学, 法学部, 教授 (30295844)
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キーワード | 保険法 |
研究概要 |
胎児保険契約については,その構想は,胎内にいる胎児が遺伝子を原因とする先天性の疾患や母体が摂取した食料に含まれる化学物質による疾患を抱えた場合に,腹腔鏡手術を行い,それによる費用を損害てん補方式か定額給付方式かで保険金を支払うというものである。したがって,胎児の疾患の原因が外部からの作用に拠るのか内的な遺伝子を原因とするのかにより,胎児保険契約の商品設計が異なってくる可能性がある。 胎児保険契約は医学との関係を無視し得ず,保険法上傷害疾病定額保険契約または傷害疾病損害保険契約との関連性が深いといえる。 平成24年に,最高裁は,傷害保険契約の保険事故の外来性についてたいへん重要な判断を示した。すなわち,疾病(内因)と傷害(外因)とを分ける基準は,傷害という結果が傷害保険契約の保険事故の要件である「事故の外来性」=外部からの外的な作用があったかなかったかに求められるところ,最高裁は,医学的判断を前面に打ち出し,身体内で胃から吐瀉物がはき出され気管につまって窒息した場合でも「事故の外来性」を肯定したのである。 この最高裁判決は,胎児保険契約においても,平成24年の最高裁判決は影響を与え得るように思われるので,平成25年度では,傷害保険契約の保険事故にかかわる重要な問題,すなわち,「事故の外来性」に関する最高裁判決を分析・検討し,研究発表(口頭)を行い,質疑応答を経て,研究内容を深めた。 これによって,胎児保険契約の構想を深めるためには,実務的には最高裁判決と平仄を合わせさらに医学的視点からも整合性があるものとする必要があるように考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度末まで,部局長を務めていたところ,国立大学改革プランの下,想定外の事項として,本部から本学法学部の改革案が示された。その案については部局内で異論が多数あったため意見調整に相当な時間,労力および精神的にもたいへんな負担がかかった。この情況が,7月頃から3月頃まで続いたため,研究する時間を捻出することは物理的に不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,諸外国において胎児手術費用についてどのように扱っているか,健康保険制度のあり方などを外国文献を入手し丁寧に文献の読み込みを行う。また,研究を推進させるため,海外へ研究調査に赴き,諸外国の胎児手術の費用について,どのように保険的にケアしているのかを調べる予定である。 javascript:onUnSave();
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度末まで,2年間部局長を務めていた。昨年度7月頃,法学部改革案が法人本部から示され新しい法学部構想を練る必要があったが,その案については,法学部のアイデンティティを失わせると受けとめられたため,部局内で異論が多数噴出し学部内は混乱し執行部自体の意思統一すら図れない衝撃であった。そのため意見調整が難航し相当な時間,労力および精神的にもたいへんな負担がかかった。この情況が,7月頃から3月頃まで続いたため,研究する時間を捻出することは物理的に不可能な情況であった。 本年度は,研究を推進するに必要な外国語文献を購入する。また,論文を構想し,可能であれば論文の一部でも執筆できるように,PC環境を整え充実させ作業効率を向上させる。 さらに,国内で雑誌に掲載論文も上京するなどして入手する。とりわけ,最新の外国語文献(雑誌および図書)は国内で入手することが困難なものがあり,海外へ文献調査に赴き,留学先の大学院の教員とも意見交換をする予定である。 部局長の任期を終えることができたので,本年度は研究に取り組み成果を上げたい。
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