研究課題/領域番号 |
24653021
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
肥塚 肇雄 香川大学, 法学部, 教授 (30295844)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎児保険 / ビッグデータ / グローバリゼーション / 逆選択 / モラルハザード / 出生前診断 / 医療情報 |
研究実績の概要 |
①日本賠償科学会第64回研究会(6月開催,於・高松)で「ビッグデータと賠償科学」というテーマで開催し(大会委員長),「ビッグデータの利用活用と人間社会・賠償科学」という標題の報告を行った。上記報告は胎児保険研究の基礎研究に位置づけられる。②同学会第65回研究会(12月開催,於・東京)で,「グローバリゼーション時代における胎児治療と胎児保険契約の可能性」と題して報告を行った。胎児保険を保険商品として開発するときの問題点,(1)胎児保険契約を保険法上傷害疾病定額保険契約として構成するか,傷害疾病損害保険契約として構成するか,(2)胎児保険契約の被保険者は母親か胎児か,(3)リスクの高い者ほど保険加入するという「逆選択」を防ぐため,契約者が契約時に保険会社に告知する事実は「妊娠の有無」と「(新型)出生前診断の有無」に限るべきか,(4)モラルハザード誘発を防止するため,妊娠中の飲酒・喫煙による不良リスクをどう排除すべきか,(5)(新型)出生前診断による母子の医療情報をいかに保護すべきか,(6)胎児治療での母親と胎児の利益相反をどう解決するか,(7)多胎による選択的中絶手術費用または中絶手術の事実も胎児保険契約のてん補または給付対象にすべきか等を取り上げ報告した。③上記①②報告は学会誌『賠償科学』43号に掲載の予定である。④なお,日本保険学会(10月開催,於・香川大学)において,本研究テーマの周辺に位置づけられる「情報の利活用」について,報告(シンポジウム「IT技術の進歩と保険事業の展開」における⑤報告「保険事業のシステ厶化に伴う保険会社側の顧客情報の利活用および保護のあり方に係わる法的課題」)を行い,その報告をまとめたもの(題目「保険事業のシステム化に伴う顧客情報の利活用と個人情報保護のあり方に係る法的課題」)が学会誌・保険学雑誌628号(平成27年3月)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
増田寛也『地方消滅』(中公新書,2014年)に示唆されているように,20歳~39歳の女性が安心安全に暮らせる職場環境,住環境及び街づくりが一般に求められるが,安心安全に出産・育児ができる一つの途として胎児保険の開発・普及が考えられるように思われる。低所得者層も加入し得るマイクロインシュアランス(Micro-Insurance)と胎児保険のファンドをいかに構築していくかについてはまだ考えがまとまっていない。格差社会が進展していく中で,いわゆる女子の貧困層に属する数が増加しているが,低所得者層も加入しやすい胎児保険のあり方について考えをさらに深めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
胎児保険の創設のために法的障害となり得る①逆選択,②モラルハザード,③選択的中絶などの生命倫理との関係に見られるように,保険適用対象の範囲の問題をいかにして乗り越えるか,解決策を提示できるかがポイントになる。また,難問ではあるが,マイクロインシュランスをどのように応用して,低所得者層の女性も安心安全に出産・育児ができるように,商品設計するかも重要な課題である。今後は,これらの研究に取り組み一定の案を示すことができようにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
採択年度に就任した役職の業務が2年間であった関係上,その間は研究時間を十分に確保できず,平成26年度は遅れを取り戻すために研究に取り組んだが,3年間の研究計画に生じた研究の遅れを平成26年度で取り戻すことが難しかった。したがって,目標とする成果が得られるまでに熟した研究とするために,海外への文献に係る研究調査も延長した平成27年度も続ける必要があり,継続的に新しい文献(洋書及び和書)を入手し続け,最新の学術情報を基礎にして,研究成果をまとめる必要がある。このような次第で,延長した平成27年度に執行できるように研究費を残すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
大まかな目安であるが,物品費として,150,000円程度を執行し,海外文献調査のための旅費として,30,000円程度を執行し,可能であれば,当初の予定どおり,Law Reviewに投稿するための準備に,20,000円程度を執行していきたい。
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