研究課題/領域番号 |
24653034
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
品田 裕 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10226136)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 日本政治分析 / 選挙キャンペーン / 地方政治 |
研究概要 |
現在、日本の社会と政治は、静かに、しかし大きく変容しつつある。これに伴い、政治家が有権者の支持を集め、票を得る方法も、大きく変わりつつある。本研究は、選挙戦における政治家の集票活動に注目し、その戦略と活動内容を、その背景となっている社会経済状況とともに記述しつつ、政治家などから聞取調査を実施し、データ化を行うこと、また、分析手法の試行など、今後の研究活動の基礎を築くことを目的とする。そのために、(i)都道府県会議員を軸に各レベルの政治家について集票戦略・活動を詳細に調査・記録すること、(ii)本格調査に備え、聞取調査の方法等を確立するとともに、変数を検討し仮説を構築すること、さらに(iii)上記データを加工すると共に、新しい分析手法の適用可能性を見極めることを目的とする。このために具体的には、以下のことを計画する。 本計画で実施する聞取調査の対象者は、地方議員が主となる。合計7名程度を予定しているが、特に近接地での調査は繰り返し行う。対象に関しては、地方議員を中心とする政治家に加え、支援者やジャーナリストとする。特に、政治家の活動の内容・頻度・接触相手・意図、支持団体との関係、他のレベルの政治家との関係に注意を払いたい。また調査の前には当然に当地の社会経済情報や郷土史に目を通し、効率的な調査を目指す。インタビューは全てテキスト化することが、好ましい。そのため録音素材をテキスト化し、その内容に応じて、追加調査を行い、また、投入する変数・分析方法・仮説を検討する基礎とする。これらのデータの分析には、ネットワーク分析や厳密な質的研究法が可能か試行する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、専ら地方議員とジャーナリスト・選挙管理委員会関係者から聞取調査を行った。近畿地方で8名、遠隔地で2名であった。近接地では繰り返しの面談を行った。地方議員は、市会議員が多くを占めた。そこでは、政治家の日常活動や政治活動の内容・頻度・接触相手・意図等を聞き出すように努めた。支持団体との関係や他のレベルの政治家との協力関係も訊くようにした。聞取調査は、基本的に代表者が行った。また、大学院生を介してであるが、ある市の市会議員全員への悉皆調査を見ることができた。これらの面談では、当初の予定に反して、録音ができなかったことがあり、その場合にも詳しいメモを全て作れたわけではなく、今後の課題となった。しかし、これらから得た貴重な知見は、分析を進める際に、変数・分析方法・仮説を検討する参考になるものと期待できる。また、選挙活動におけるインターネット解禁が急遽、話題になったため、部分的にではあるが、調査・検討を行った。方法論上の試みとしては、新しい分析手法を取り入れるため、テキストマイニング・ネットワーク分析・内容分析・インタビュー技法、グラウンデッド・セオリー・アプローチ等の分析手法について、文献を入手し、一部、実験的に試用しながら、今後の有効性について検討した。以上の活動の結果、本年度は、従来より行ってきた都道府県会議員調査の解説を行ったほか、都道府県会議員の集票活動を明らかにしたもの、民主党の2012年総選挙の惨敗を選挙の観点からスケッチしたものなどを発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
聞き取り調査を、二年度目においても引き続き、行う。対象は、初年度と同じ地方議員を中心に、国会議員(同候補者を含む)、ジャーナリスト、支援者について行う。二年度目は、初年度の調査を基にそこからさらに聞きたいこと、初年度からの変化であるが、できれば、2012年総選挙や2013年参院選などにおける、当該地域の国政選挙の陣営との協力関係や応援について聞きたい。調査に際しては、引き続き、事前に郷土史・社会経済情報などで地域の背景について理解を深める。前年度から積み残された分および本年度に調査した分は、できるだけテキスト化し、録音等ができなかった場合も、詳しいメモを作成する。これに追加情報の付加や加工などを行い、分析可能な状態にする。これらの準備には研究補助者の協力を得る。今年度も、初年度に引き続き、テキストマイニング、ネットワーク分析、質的研究などを修得し、これを利用した分析を検討し、諸分析手法の有用性や利用可能な範囲を明らかにし、このうち、有用なものについては本格調査の際に利用できるように準備する。今年度の研究が、順調に進めば、12月上旬までには、次の段階に、いつ、どのように進めるかという点について見通しをもつことが可能になると予想している。可能性があるようであれば、将来的には、共同研究者を募り、全国いくつかの地点での調査を行うとともに、中長期的には計量分析にも取り組むべく、基盤研究の申請につなげることを考えている。また、年度末にかけては、本研究計画のまとめを行い、一定の結果を出す予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
25年度経費と合わせて使用する。
|