研究課題/領域番号 |
24653037
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
遠藤 乾 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (00281775)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ヨーロッパ / 統合 / 逆統合 / 欧州 / EU / 危機 / 地域主義 / グローバル化 |
研究概要 |
本研究は、欧州逆統合(European Disintegration)をテーマとし、政治体としての欧州の解体メカニズムを探求するものである。その際、欧州連合(EU)に焦点を当て、①2005年の憲法的危機から現在進行形のユーロ危機までの過程を経験的に跡づけながら、②ユーゴやソ連などの連邦解体の政治過程との比較の視座から比較政治史的な考察を交錯させ、③申請者が取り組んできた『ヨーロッパ統合史』を発展的に書き換えたいと考えている。本研究ではさらにそこから、2つの点で含意を汲み取れるのか見極めたい。一つは④思想的なもので、主権と逆統合との関わりを検討すること、もう一つは⑤政策的に、地域主義やグローバル化などの相互依存ガバナンスのあり方への含意を探ることである。 これまでのところ着手できたのは、上記の①、④、⑤である。すなわち、まず、近年の憲法・ユーロ危機をあとづけ、その意味を思想的および政策的に探った単著『統合の終焉―EUの実像と論理』(岩波書店、2013年、530頁)の脱稿に力を注いだ。刊行直前にまでこぎつけたこの本の発刊が次年度最初の仕事となる。 それは同時に③にもつながる作業であった。つまり、ユーロ危機を通じて明らかになったヨーロッパ社会の内部における断層・断絶に着目し、社会・民主・機能的な正統性の三重苦として『ヨーロッパ統合史』の最現代史を描きなおす作業でもあったのである。これにより、①③④⑤に初年度から着手できたことは、十分な成果であったと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
見方によっては、計画以上に進展したといえる。というのも、初年度において、単著『統合の終焉』を岩波書店から上程寸前までこぎつけ、近年の憲法・ユーロ危機をあとづけ、その意味を思想、政策的に探る作業にすでにめどをつけてしまったからである。 しかしながら、おおむね順調に留めたのは、以下の理由からによる。つまり、ユーゴやソ連などの連邦解体の議論への参照がいまだ進まず、それとの関連で欧州逆統合をいまだ捉えられていないことによる。くわえて、論点整理した萌芽的なポジションペーパーの執筆が、体系的な著書の執筆を優先したことにより、やや遅れていることによる。 しかし、強調しておくべきは、ユーロや憲法危機について、本や論文をまとめたことである。これは研究の進展を意味する。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の大幅な変更は必要ない。欧州統合が逆統合と同時に進行するメカニズムを、他の事例との比較の中で明らかにしていきたい。次年度は、海外における類似の研究との接点を厚くしていく所存である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の経費に残額が生じたのはその節減・効率的使用を図り、次年度において海外調査に集中的に回す予定であるためである。
|