戦後賠償の延長に、移民問題と高度成長がどのように絡まってくるのかという問題について、福島を素材に取り上げて昨年度に国際学会で発表したが、福島県の元知事に非常に長いインタビューを行い、その記録をまとめた。 賠償と経済協力という枠組みが作られたにもかかわらず、戦争動員によって失われた人間の生命、ならびに、引揚によって残された在外財産、この二つに付着していた強い人間の感情の問題が清算されなかったことが歴史認識問題の起源であること、各国の国内社会に封印され国民感情に転嫁したその感情の封印が解き放たれていく過程こそが、1990年代のアジアの民主化と冷戦終結であったこと、1990年代初頭に日本の宮沢喜一自民党政権がすでに「歴史を踏まえた国際交流」が起動していたこと、それが感情の衝突に向き合おうとした村山談話を生み出したこと、それにもかかわらず国内からの反発がやがて靖国参拝の政治的な背景となり、戦争と植民地支配への「謝罪」と「反省」の基盤が崩れていった過程をまとめ、岩波書店の「シリーズ安全保障」に論文として発表した。また、歴史認識問題の典型である慰安婦問題についても、国際学会で発表をした。
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