平成26年度は、今までの研究で得られた成果をもとに、日米合わせ3つの学会で発表を行った。理論的枠組みとして、構成主義と合理主義といった相反するアプローチを採用し、インタビューの結果を用いて政策決定者やその他アクターの規範に対する解釈を中心に考察を行った。この考察の結果を用い、政策決定において、どのような要因が大きな影響を及ぼしているのかを議論した。発表では、武器輸出三原則が1967年に表明され、その後堅持されたのは、当時の国際及び国内状況を勘案した合理的選択の結果であり、反軍国主義的規範の影響ではないこと、また2011年の同原則緩和の要因も、政策決定者が経済的要因などの国内及び国際状況を合理的に勘案した結果であり、反軍国主義的規範の制約を受けていないことを議論した。 しかし、同枠組みでは、選好の変化の要因が曖昧となってしまい、既存の枠組みの域をでなかったため、学会で得られたアドバイスや批判を踏まえ理論および枠組みの修正を行った。修正後の分析枠組みでは、アクター間(規範起業家・守護者と政策決定者)のパワー配分を独立変数として取り入れた。これにより、合理主義的アプローチの見地に立ちながらも、規範の規制作用が説明可能となった。国内規範が政策決定に及ぼす規制作用の強弱は、(政策決定者に対する)規範起業家・守護者のパワーに比例することが明らかになり、より簡潔かつ説得力のある説明が可能となった。同枠組みを用いた論文は、平成27年度発行の『国際政治』181号に掲載確定である。
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