研究課題/領域番号 |
24653048
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青柳 真樹 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50314430)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 相互依存 / タイミング / 価格競争 / 国際情報交換 / カナダ:インド |
研究概要 |
本年度はメカニズムの内と外との関係について財を販売する企業間の価格競争の観点から分析を行った。伝統的な経済学で扱われる価格競争とは異なり、企業が複数の異質な消費者にそれぞれ異なる価格を提示する状況を想定する。これは申請書に記載した複数のメカニズム間の競争ととらえることができる。具体的には以下の二つの課題について研究を行った。(1) ネットワーク上に分布する消費者が隣人から消費の外部性を受ける場合に、2企業がそれぞれの消費者に対する価格競争を行うことによりどのような価格体系が均衡と整合的であるかについて検討を行った。消費の外部性のない時にはすべての消費者に対する価格が限界費用と等しくなるはずであるが、外部性のもとでは各消費者に提示される価格はネットワークの形態と密接な関係を持つことが示される。現実社会の消費財は多くの場合外部性を持ち、それらの財に関する企業間競争は一般的である。本研究はそのような状況における価格競争の均衡をネットワークの構造と関連づけた最初の研究として意義が大きい。(2) 2企業のそれぞれの財に対して消費者の見出す価値が相互の私的なタイプに依存している状況を考え、消費者は財の購入先、およびそのタイミングを選ぶことができるものとする。(不可逆的な)購入のタイミングが早ければ消費者は自らの情報のみに基づいて行動する必要があるが、タイミングを遅らせればより多くの情報を得たうえで行動することができる。企業側は消費者のそのような行動を織り込んだうえで、それぞれのタイミングで消費者に提示する価格を選択することにより競争を行う。本年度はこの問題の分析に向けて基礎的な取り組みを開始した。現実社会における消費者は常に他者の消費行動から情報を読み取ろうとする。そのような相互依存と財購入のタイミングという基本的な問題に企業間の価格競争を初めて取り入れた本研究の意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記課題(1)についてはほぼ当初の計画である分析部分が順調に進展しつつある。論文の執筆については途上であるが、これは想定通りである。上記課題(2)については当初の計画にはなかったが共同研究という形でその端緒をつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記課題(1)については論文の執筆を継続し、その完成に努める。7月に海外の学会で報告する予定である。その後順調に進展すれば査読誌への投稿にまで進むことも視野に入れる。上記課題(2)については分析を継続する。特にもっとも困難が予想されるそれぞれの消費者がタイミングを自由に選ぶことのできる状況について分析を行い、論文の執筆に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
分析や論文の執筆にあたって各種コンピュータソフトが必要となることも考え、その購入費用として研究費を一部使用する計画である。さらにはセミナー等での報告の旅費の一部として充当することも計画する。
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