研究課題/領域番号 |
24653053
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
深貝 保則 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (00165242)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 租税思想 / 自由主義 / 近代国家 / カール・S.シャウプ / 国際情報交換(米国) |
研究概要 |
開国(日本)および南北戦争(米国)の時期以来の租税思想の展開を比較検討するという研究課題に照らして、その基礎作業として主に下記の点を実施した。 1. 近代的な国家形成にとって西欧型の自由の観念を日本社会がいかに取り入れたのかは、社会のあり方としてはむろんのこと、財政を司る統治の一機能がいかに機能しえたのかという意味でも重要な意味を持つ。19世紀終盤から20世紀前半にかけての自由主義変容の国際比較を行なうワークショップの機会に、日本における自由の概念の変容および自由主義の受容の特殊性をめぐって英文で報告を行なった。 2. 当該の研究課題遂行に当たっては基礎的な資料を確認することが重要であり、研究計画初年度の作業として、(i) 税務大学校を訪ね、租税資料室の関連資料にアクセスするとともに今後の資料検討の協力のための打合せを行なった。(ii) アメリカ財政史の研究者 Professor Elliot Brownlee の来日を機に、横浜国立大学附属図書館所蔵のカール・S.シャウプ・コレクションの資料のうち一部をめぐっての検討を進めるワークショップを開催した。(iii) 同シャウプ・コレクションのうち、シャウプ (Carl S. Shoup) 自身による西欧財政思想の検討抜き書きのノートについて検討に着手した。当該の抜き書きは主に、19世紀後半以来のドイツ、イタリアの財政思想に関するものである。 3. 本研究課題の守備範囲に関わる一種の概観を果たすために、数年前からの準備を活かして英文論文の彫琢作業を進めた。この論文は2013年の遅くない時期に論文集の一部に収録刊行されるはこびとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的な資料確認作業については、横浜国立大学所蔵のシャウプ・コレクションの資料整理作業とも連動して一定の進展を遂げた。また、税務大学校およびアメリカの当該領域の研究者との打合せやワークショップを設定することにより、今後の展開に向けた準備も円滑に進めた。 ただし、さまざまな業務のなかで日程的な制約が生じたため、アメリカの関連機関(米国議会図書館、コロンビア大学貴重コレクションなど)における調査の機会を持つことができず、向後を期すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
19世紀終盤を中心とした時期のドイツおよびイタリアの財政思想の、アメリカ経由および日本への直接の導入を検討する。とりわけ、セリグマンと並んで20世紀初頭の財政および社会改良の思想的基盤を提供したリチャード・T.イーリーの検討を中心的に進めるとともに、アメリカにおける単税論の展開と日本へのそのユニークな影響の状況を調査するものとする。 調査として、日本国内での関連研究機関(国会図書館、神戸大学社会科学系図書館花戸文庫など)およびアメリカの関連機関(コロンビア大学など)を予定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度内にアメリカでの調査を予定していたが、日程設定の事情から次年度に延期した。また、海外研究者とのワークショップのためにその招聘費用の一部を支出する可能性を含めて年度内の予算を予定していたが、当該の研究者が別のプログラムでの来日が可能になったため、ワークショップ当日の謝金(専門的知識の提供)のみの支出に限定することができた。これら事由により当初予定の費用のうち相当額を、以下の点を中心に次年度に有効に活用するものとする。 次年度にあっては、関連図書の購入(物品費)、基礎資料整理の補助および専門的知識提供のための謝金(人件費・謝金)のほか、とくに国内およびアメリカでの調査に主たる費用を充てる。文献取り寄せのための費用(その他経費)を若干設ける。また、横浜国立大学附属図書館所蔵のシャウプ・コレクションのうち本研究課題の遂行のために利用する資料について、マイクロフィルム化および必要に応じてデジタル画像化を施すために必要な経費を支出する。これは、検討すべき当該の資料群が戦間期・戦直後期の酸性紙であって、劣化が著しいためである。
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