研究課題/領域番号 |
24653065
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
内田 秀昭 三重大学, 教育学部, 准教授 (20452724)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経済政策 / 行動経済学 / マクロ経済 |
研究概要 |
平成24年度は、特に双曲割引モデルなど本研究の中心となる動学モデルを中心に多田洋介著『行動経済学入門』、マッテオ・モッテルリーニ著『経済は感情で動く-はじめての行動経済学-』、Nick Wilkinson、Matthias Klaes著『An Introduction to Behavioral Economics』などの文献を読み解くことで行動経済学の基礎理論について理解を深めた。 そのような文献調査と並行して、9月初旬にアメリカ、クリーブランドとデトロイトを研究調査のために訪問した。クリーブランドやデトロイトなど五大湖周辺は歴史的に鉄鋼業や自動車産業などの製造業が盛んであったが、近年はIT産業や宇宙産業、現地生産を行う日本の自動車企業の進出など南部の経済発展に押され気味で、2008年に発生したリーマンショックの影響を最も顕著に受けた地域として知られており、不況の影響力を調査するには最適の対象である。現地での聞き取り調査の結果、当該地域では借り入れを行った人々に対してローン契約の説明が十分に行われていなかったことがわかった。また、ルイジアナ州やカリフォルニア州など南部で不況の影響が大きかった地域ではヒスパニックなど英語能力が十分でない住民に対して彼らの母語による説明が行われていなかったことも知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は科学研究費補助金の採択が決まった後、勤務する大学の業務として中国天津に3か月間の滞在し、現地での教育に携わらなければならなくなったため、当初の予定よりも若干遅れているが、大幅な遅れではない。今後は後れを取り戻すべく本研究に勤しんでまいりたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずアメリカの世界恐慌に関して、林(1988)、秋元(2009)、Galbraith(1954)、Friedman and Schwartz(1963)、Bernanke(2000)、日本の昭和恐慌に関して、長(1973)、高橋、森垣(1993)、中村(1994)、岩田規久男編(2004)などの文献を丁寧に読み解くことで、世界恐慌や昭和恐慌がどのような時代背景のもとで発生したのかをその前後関係を含めて調査したいと考えている。世界恐慌や昭和恐慌など歴史的な事実として当時の人々がどのように行動したのかというデータを踏まえたうえで、動学的一般均衡モデルにそれらの概念を導入することを目指す。その他にもFarmer(2010a, 2010b)は意思決定における期待の役割を重視して独自の経済モデルを構築している。このような研究も本研究を進めるうえで非常に重要であると考えられるので、参考にしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画としては主に先行研究文献の購入と、研究調査のための旅費に研究費を用いることを計画してる。平成24年度はリーマンショックの影響を調査すべくアメリカへ赴いたが、ここ数年でリーマンショックとともに世界的な景気悪化の懸念材料と考えられているユーロ問題を調べるためにユーロ危機の発端となったギリシャや欧州中央銀行の所在地として問題解決の中心となっているドイツでの調査を考えてる。また、一定の研究成果が得られれば、それらをまとめ、国内学会および国際カンファレンスで研究の成果を発表し、そこでの議論を通じてさらに精度の高い理論の構築を目指す。
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