本研究の実績として、はじめにウォール街での1929年の株価暴落によって始まった世界恐慌と日本での昭和恐慌が発生した歴史的背景およびその時に家計や企業などの経済主体、および金融政策を取り締まっていた中央銀行がどのように行動したのかを先行研究および実施調査によって明らかにすることができた。特に、データに基づいて国内総生産や失業率、インフレ率が恐慌後にどのような反応を示したのかという点、それ以外には当時のアメリカの連邦準備制度においては各行の独立性が強く、議長が十分なリーダーシップを発揮し得なかったことを明らかにすることができた。次の段階として、金融恐慌やそれに続く世界的大不況時において人々が実際にとった意思決定と行動を行動経済学で用いられる概念で理解し、標準的な経済モデルをどのように改良すればそのような現実の人間の行動をとらえることができるのかを検討した。また、サブプライムローンの問題に関しては、文献だけでは明らかにできない点が多いため、アメリカのクリーブランドおよびデトロイトで現地調査を行い、サブプライムローン時における金融機関や家計の行動、制度的な問題点についてNPO法人からヒヤリング調査を行った。その他に、世界的な恐慌は一国内だけに収まらず、国際的に波及していく可能性が高いことから、国際貿易をモデルを組み込んだ動学マクロ経済モデルの構築という観点からも研究も進めた。しかしながら、最終的にそれらの成果を統合する形で行動経済学の要素を組み込んだマクロ経済学モデルの構築し、分析するという段階にまではいたらなかった。
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