研究課題/領域番号 |
24653070
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小井川 広志 関西大学, 商学部, 教授 (50247615)
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キーワード | リアル・オプション / 幼稚産業保護 / マレーシア / パーム油産業 |
研究概要 |
本研究の基本的着眼点は、途上国工業化のプロセスを試行錯誤的な政策運営の連続と捉え、これをリアルオプションのフレームワークを用いて体系化し、幼稚産業保護貿易論の再評価を試みるものである。ケーススタディとしてマレーシア工業化のプロセスを取り上げ、リアルオプション手法を援用した量的、質的評価の枠組みを提示するものである。 これまでの研究では、主に電気電子企業に焦点を当てて産業研究を行ってきたが、平成25年度では新たにパーム油産業をケーススタディとして取り上げ、その工業化プロセスにリアルオプション的な解釈を試みた。パーム樹はそもそもマレーシア自生ではなく、ゴム・プランテーションの多角化の中で、政府主導でその発展が模索された。その経緯からすれば、パーム油産業の発展はリアルオプションモデルでいうところの同時複合オプションに適合的であることが示唆された。 かかる理論的考察を踏まえた上で、Malaysian Palm Oil CouncilのCEO Yusuf氏などにインタビュー調査を敢行し、パーム油産業の発展が試行錯誤的に開始、継続された経緯を政策運営当事者から確認することができた。この成果の一部は、学内紀要にて英文で発表され、国内学術雑誌に投稿し査読結果待ちの状態である。Oxford大学の研究協力者との研究交流も、Oxford現地に赴くなどして継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マレーシア電気電子産業、パーム油産業と、個別産業研究での知見に基づけば、マレーシアの工業化が試行錯誤的に遂行されたことは疑いない。これは、国際経済環境の変化に柔軟に対応し、その変化をむしろ成長の契機にしようとしている点で、リアルオプション的枠組みにまさに合致する発展戦略であり、この視点から途上国工業化を論じた研究が皆無であることからも本研究が挑戦的萌芽研究として実施されている意義を再確認している。 ただし、このような定性的なファインディングを、数理的な理論モデルに昇華、抽象化させる段階までには到っていない。これは、最終年度に課された大きな課題と認識している。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、研究対象を複数の産業に拡げることによって、マレーシアにおける個別産業の発展がリアルオプション的な戦略思考に基づいて遂行されていることが一層明らかになっており、本研究の着想はサポートされている。このような経緯を踏まえ、研究最終年度である平成26年度には、ケーススタディーとしての産業を更に拡大し(太陽光パネルもしくはメディカル機器産業を候補としてる)、これらの産業への現地調査を敢行すること、およびこれらの産業育成の経験を包括する数理理論モデルの構築に研究のウェイトを置いていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終的に残った残金は微少な額ゆえに使いにくく、来年度の経費と合算してより効果的に使用した方が望ましいと判断した。 旅費、あるいは図書資料費として次年度予算として有効に利用する予定である。
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