研究課題/領域番号 |
24653073
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮脇 淳 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (50281770)
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研究分担者 |
若生 幸也 北海道大学, 公共政策学連携研究部附属公共政策学研究センター, 研究員(Researcher) (90620790)
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キーワード | 損失補償契約 / 財政リスク / 第三セクター / ガバナンス / 地方財政 / 林業公社 / 三セク債 |
研究概要 |
平成25年度は、神戸市の外郭団体改革を踏まえつつ、総務省自治財政局と連携し第三セクター等の整理・再生に向けた制度設計に結び付ける実践的研究を行った。具体的には、第三セクター等の集中改革のため25年度末まで発行が認められてきた三セク改革債の今後の取り扱いと、26年度以降の第三セクター等と地方財政に対する制度を如何なる理念と方向性で構築するか研究会も形成し検討を行った。検討結果として、林業公社等第三セクター等にまだ問題は残されているものの三セク改革債については25年度限りとし、26年度以降は地方自治体が自主的な改革に取り組むスキームを中心とすることを明確にした。その際に損失補償契約、短期融資等の金融との関係についても検証した。 この検討において、①5年間に及んだ集中改革期間の成果の検証、②個別第三セクターについて事業モデル、財務状況、特性等を実地調査し80団体の事例を整理、③損失補償契約の取り扱いについて安曇野訴訟に対する最高裁判所判決を踏まえ、また、契約自由の原則を尊重しつつ、地方財政の持続性確保と財政リスクの最小化を図るため、限定化する具体的な制度設計の検討、④短期貸付等地方財政制度の基本原理に関わる問題点の検証等を行った。とくに、林業公社については、土地の所有関係が輻輳しその権利関係の整理が大前提となるためその特例的制度の模索、そして第三セクターをめぐる諸問題は、第三セクターに限定されることなく公有地信託制度等に共有すべき課題であることなどを整理した。 一方で、第三セクターのメリットについて、地域間連携のための新たな協定の活用、民間化による地域活性化に応用できないか、地方財政としてのガバナンスを維持・強化しつつ、新たな地方自治体間そして官民間の連携に向けた新たなモデル形成が25年度の研究活動において残された課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
神戸市外郭団体住宅供給公社の民事再生等の金融面・法的面の検証が金融機関等との協議の検証も含め敏速に行うことができたため平成25年度前半に終了し、当初研究計画に比べて半年程度前倒しで検証過程を経ることができた。それを踏まえつつ総務省第三セクター等の集中改革期間終了後、すなわち平成26年度以降の第三セクター等のあり方に関して総務省との連携を形成しつつ制度設計に結び付ける研究活動を積極的に行うことができた。また、第三セクター等外郭団体の整理・統合に関する検証を法的・金融的側面等多面的に実施することにより、第三セクター等のメリットを普遍化し、そのメリットについてガバナンスする視点を新たに認識し、研究活動の成果に厚みを持つことができた。その厚みも、80に及ぶ第三セクター等の具体的事例研究を通じて実施できた点において最終年度に向けた研究まとめの基盤形成にもなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの成果を踏まえ、第1に第三セクター等外郭団体の整理統合に関する法的・金融的側面からの実証研究のまとめを出版の形で行うことがすでに内定しており、その出版に向けた原稿執筆・資料整理を年度当初より行う。第2に、25年度の研究活動の成果として80法人の具体的事例研究で新たな視点として認識した地域活性化に向けた第三セクター等の新たなガバナンスモデルの形成について、総務省及び地方自治体と新たな研究体制を形成し進めて行くこととする。なお、後者について従来第三セクター等外郭団体の財政・金融の面からデメリットを中心とする視点からの整理が多く、それを踏まえつつも新たにメリットを抽出しそれを有効に機能させるためのガバナンス構造の構築を検討するため、第三セクター等外郭団体に対する個別の実施調査が必要であり、それをどこまで実施するか総務省のノウハウも含め早期に検討する。例えば、地方自治体の社会資本の老朽化が進む中で、コンセション方式の事業実施権の相手方としての第三セクター等の適正性や外部環境変化に対する耐久性強化のための第三セクター経営の計画形成のあり方等に視野を広げて行きたい。
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