研究課題
現在、行政主導の画一的な政策によるまちづくり・地域振興から脱却し、いわゆる社会企業家を中心としたまちづくり・町並み保全運動に期待が寄せられている。しかしながら、その一方で、社会企業家活動は多様なステークホルダーとの連携が必要である反面、多様な利害を取り込むこととなり、目標達成に支障が生まれてしまうという「連携のパラドクス」を抱えている。本研究は、新制度派組織論のパースペクティブを用いて、実態調査を通じて、実際に社会企業家はこうした問題にどのように対処しているのかを明らかにし、理論的・実践的な示唆を得ることを目的としている。初年度は、社会企業家活動における正当性獲得という視点から、新制度派組織論の文献レビューを行い、分析のフレームワークを構築する作業を行った。具体的には、制度的ロジック(institutional Logic)、組織フィールド、理論化と具象化の意味形成プロセスなどの概念を抽出し、とりわけ、制度論と言語的アプローチ、ストーリーテリングアプローチに着目した。次年度は、こうした観点から、実地調査を行った。対象事例として、兵庫県篠山市におけるまちづくり、町並み保全運動を取り上げた。本事例では、篠山市の元副市長がたちあげた一般社団法人が社会的企業の役割を果たしている。調査の結果、地域のステークホルダー間のつながり(ソーシャル・キャピタル)を作り出すとともに、認識されてこなかった地域資源に注意を焦点化させたこと、事業モデルを抽象レベルで語り、他地域との連携を促進するとともに、個別具体的なストーリーも語ることによって、ステークホルダーの関心を調整するという2つの言説戦略を展開していること、地域活性化を推進するNPOを資金、ネットワーク面から支援するプラットフォームの役割を果たしていることなどが明らかとなった。今後も、篠山の地域振興の事例を引き続き調査する予定である。
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経営学研究
巻: 23巻1号 ページ: 33-56
JOURNAL OF STRATEGIC MANAGEMENT STUDIES
巻: Vol.6 No.2 ページ: in press