研究課題/領域番号 |
24653082
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
伊藤 博之 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20242969)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 組織統治 / 統治性 / フーコー / 言説的実践 |
研究概要 |
企業の統治について株主を重視する立場や従業員を重視する立場などが錯綜している。とりわけ、現在、企業統治論で支配的なパラダイムは、株式市場の牽制力を重視するエージェンシー理論である。一方で、それに対して、伝統的な日本企業の活力の源泉を従業員主権に求める立場などが対立している。しかし両者の議論ではいずれもが、最終的に企業のパフォーマンスへの貢献を基準として、まったく異なる土俵上で論理が展開されている。 本研究では、哲学者のミシェル・フーコーの統治性の論理を中核に据えて、組織を統治するということの意義を根本的に問い直すことを意図している。フーコーによれば、統治とは実践を適切に配置することであり、そこでは、統治される主体が構築されることが同時に行われる。このようなフーコーの論理からは、政治哲学における統治の論理、権力、主権、正統性の論理なども問い返されることになる。現在は、以上のような科観点から、主として、経営学、哲学、社会学、政治学などの文献を広く解読し、理論的なフレームワークを整理する作業を進めている。 今年度は、とりわけ以下のような点でで以下を挙げたと考えられる。第一に、企業統治をめぐる錯綜した議論に対して、このような組織の統治性に関する論考は、批判的かつ俯瞰的な解釈のフレームワークを提示することがでできることを、企業統治の議論を批判することを通して提案した。第二に、組織の統治の分析を、政治(哲学)学や哲学を企業統治論に連結することもできることを示した。第三に、既存の経営学や実務の世界での企業統治を巡る諸議論を統治性を構築する言説的実践として歴史的に再解釈することが可能になることを提案した。次年度は、理論的フレームワークを掘り下げることに注力したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、企業統治論における既存の理論の文献の収集とレビュー、フーコーの統治性に関連する文献の読解と関連する書籍の収集・読解、政治哲学の分野への論考の拡大などの作業を進めた。とりわけ、以下の成果を達成したものと考えている。 第一に、既存の企業統治論の展開に対して、フーコーの系譜学という独自の手法を応用して言説的実践としての企業統治論についての独自の解釈を提示する論文を執筆した。第二に、フーコーの統治性が社会学や経営学で応用されている文献を収集し、読解を進めている。第三に、統治をめぐる東西の歴史的な思想とフーコーの統治性の議論との関連性が新たなテーマとしてあらわれつつあり、研究がダイナミックに展開しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
フーコーや政治哲学、古今東西の統治思想、経営者の統治思想に関する文献は膨大なものがあり、初年度の研究費の制約もあり、十分に関連文献の収集と読解が展開できていないところもある。引き続き、これらの文献の収集・読解を進めることが今後の研究の主たる方策となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の課題は、上記の文献(フーコー、政治哲学、古今東西の統治思想、経営者の統治思想)を収集・読解することであるが、とりわけ、経営者の具体的な統治思想と政治哲学についての論考を進めることを重視している。一方で、組織統治という理論的フレームワークがどのようなものになるのかの概要を示す論文の執筆を進める予定である。
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