研究課題/領域番号 |
24653082
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
伊藤 博之 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20242969)
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キーワード | 組織統治 / 自己の統治(陶冶) / 徳の涵養 / 統治性 / 企業統治論 / 卓越性の追求 |
研究概要 |
企業統治論から組織統治論へのパラダイムの展開が何を意味するのか、組織統治論の理論的な概要や探究の焦点はどのようなキーコンセプトで表現できるのかについてのおおよその見取り図を描くことを目的に研究を進めてきた。その際、企業統治論や組織論の研究に依拠しつつも、政治哲学(主に、プラトン、アリストテレス、フーコー、マッキンタイア、アサドなど)における統治の論点を考察の基礎に据えて文献レビューを進めながら思考を展開してきた。 その結果、以下のような大まかな理論的な枠組みを描くところまで到達した。①企業統治論では政治哲学の統治について知見を無視してきた。②組織統治論で課題となるのは、組織の統治と自己の統治のバランスをどのようにとるのか、というものである(組織の統治と自己の統治の重なりありとして統治を捉えるという論点は、少し違う形であるが、晩年のフーコーが追及している課題でもある)。③組織の統治における卓越性の追求の重要性、自己の統治における個々人の幸福の追求と徳の涵養が考察すべき課題であることである。④企業文化論や組織論などで、政治哲学の統治概念に関連する問題は暗黙裡に議論されてきた。 残された課題は、組織の統治と自己の統治のバランスにおいて、個人の自由がどのような価値を有するのか、また、以上の用語の抽象的で難解な表現をわかりやすくするためにも具体的な事例の分析を進めることの2点にある。それについて具体的な計画は「今後の研究の推進策」のところで後述する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が概ね順調に進展していると判断する理由は以下のとおりである。①組織統治論の理論的な概要をほぼ描くことができた。②その基礎となる政治哲学に関する統治に関する思想の概要をおおよそ把握するに至った。③過去2年ごとに1本づつ到達点を示す論文を発表していて、次年度の公表予定の論文も現在準備段階に入っていること。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究は最終年度に当たるので、年度の中間で事例研究を中心とした組織統治論の分析力を例示する論文を執筆することを第一の課題とする。それと同時に、政治哲学、組織論、企業統治論の文献レビューを継続し、研究年度の終了後になるであろうが、組織統治論の一応の完成形を示す論文群を執筆するための準備をすること、さらに、本研究を発展させる科学研究費の新たなプロジェクトの応募をおこなうことが課題となる。
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