本研究は、あらゆる領域において非常に関心が高まっているサービスの「質」に焦点を置くなかで、特に医療におけるそのサービス的側面の科学的な解明とその成果の現実的な適用を目指すことを全体構想とし、医療受療後の患者への調査を通して医療のサービス的側面の定量的な把握と評価を可能とする測定ツールの開発を具体的な目的とするものである。 本研究の具体的な内容としては、医療におけるサービス的側面に関する海外における先行理論の検討を行ってきたのであるが、なかでも、測定ツールの開発に際して、欧米諸国の先行する知見を基に検討を行ってきた。加えて既存データに関しても再解析に基づく検討を行う中で、我が国における制度的、社会的、文化的側面や背景を測定ツールにおいて十分考慮したものでない限り、構築されたデータにおける信頼性や妥当性は担保し得ないという結論に至った。 この点に関しては、海外における当該課題の検討に関する研究や実践的な検討においても、指摘されている点であり、こうした点を加味する形でのツール構築が求められているといえる。 そこで本研究においては、たんなる定量的、統計的な妥当性や信頼性を超えて、より実質的な形で我が国の実践現場において用いることが可能なツール構築を行う必要があるとの結論に至った。また最終的に、患者による医療のサービス的側面の評価に関しては、基礎的な定量的なデータの構築が必要であると同時に、質問項目や指標などの社会的、文化的、制度的な妥当性をどのように担保すべきか、という点を十分に考慮した形での、研究スキームの構築が必要であるとの結論に至った。
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