研究課題/領域番号 |
24653089
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
石井 充 金沢工業大学, 工学部, 講師 (10350753)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ネットワークの外部性 / イジングモデル / 統計力学 |
研究概要 |
ネットワークの外部性が顕著に働いていると思われる例をいつくか取り上げ、そのユーザー数変化について定量的に調査した。具体的には移動電話・各種SNSのアカウント数を調査し、その時間的推移を調べた。その結果、おおむね飽和状態の20%程度のユーザー数のところで、ユーザー数の増加に定性的な変化が生じることが共通した特徴として存在することが判明した。この時点を境にして、非線形な増加から線形な増加へと増加の性質が変化していた。 このことを説明できる理論的枠組みとして、イジングモデルを拡張した、磁性体における相転移現象を背景に持つモデルを構築した。これは、鉄の原子などに見られる、各原子が磁性を帯び、それらが同じ方向を向くように力が働く事例を説明できるものであるが、その類似性をネットワークの外部性の現象に適用し、個人間で同じような購買動向を誘発するように力が働くモデルを構築することができた。 このモデルにおいては、初期状態として誰もサービスに加入していない状態をとり、サービスに加入している人の割合が時間的にどのように変化するかを追跡することができる。これを用いていくつかの予備的な数値計算を行った。その結果、1次元のモデルにおいては、一見したところでは非線形から線形へという変化が再現できるように思われたが、非線形部分の形状を詳細に調べると、その振る舞いは2次関数的であり、現実の事例でみられる指数関数的な増加を再現できないことが判明した。その後、2次元のモデルで数値計算を行ったところ、非線形部分の指数関数的な振る舞いを再現できた。このことは、1次元では相転移現象が存在しないというイジングモデルの特徴を考えると妥当なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの構築・現象を表す実例の分析・予備的数値計算の3点すべてで、当初の2012年度の予定内容を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
モデルで用いている格子のサイズを拡大し、さまざまな境界条件のもとで数値計算を実施する。これにより、現実の現象との定量的な比較に耐えうる精度で計算を行うことができる。結果を現象と比較し、その妥当性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予備的な計算で使用した計算装置であるGPUに加えて、新規に購入したGPUを利用し、より大規模な計算を現実的な時間範囲内で行えるようにする。このため、GPUを買い増しする。
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