研究課題/領域番号 |
24653090
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
大木 裕子 京都産業大学, 経営学部, 教授 (80350685)
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キーワード | 音楽祭 / 伝統文化 / イベント経営 |
研究概要 |
これまでの研究計画では、以下の点を明らかにすることに重点を置いてきた。第1に、世界の音楽祭についての体系化が必要になる。マッピングと共に、これまでの海外主要音楽祭のビジネスモデルのパターンを発見し、その戦略的意図を整理する。第2に、無形文化財としての音楽祭の構成概念を整理し、概念的枠組を構築し、分析フレームワークとする。第3に、構築された分析フレームワークに基づき、海外の主要音楽祭のダイナミズムについて、歴史的及び現在の実態を測定、記述、比較、分析する。 この計画に従い、本年の研究では前年度の研究をもとに、国内外の研究機関、研究者、実務家との交流を通して、事例の社会的背景・文化的背景を含めた広範な情報収集をおこなうことで研究の枠組を精緻化するとともに、より詳細な事例研究を継続した。具体的にはドイツのバイロイト音楽祭、オーストリアのザルツブルグ音楽祭、スイスのルツェルン音楽祭を抽出し、現地でのフィールド調査を加えることで、ヨーロッパの主要音楽祭の実態を測定・記述・比較し分析した。実態の一例をあげれば、バイロイト音楽祭では、チケットの一般入手の困難さへの非難に対応するため、今年度からインターネット販売を開始したが、その結果従来の固定客との乖離が顕著となった。カラヤンが復活させたザルツブルグ音楽祭は、公演数を大幅に拡大したことで、チケットの残席が目立つ結果となっている。アバドが立ち上げたルツェルン音楽祭は、アバドと演奏家仲間がけん引しており、地元市民にも広く音楽を提供する試みを実施し地元一体型のイベントとして成功している。更に、現地ならではの貴重な資料を収集することにより、これまでの文献研究を裏付けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では欧州の歴史ある音楽祭を、組織としての知の継承が重要となる無形文化財として捉え、価値継承のためのマネジメント構築を目指している。このため研究では、第1に世界の音楽祭を体系化するためにマッピングをおこなう。第2に無形文化財としての音楽祭の構成概念を整理し概念的枠組を構築する。第3に主要音楽祭のダイナミズムについて歴史的及び現在の実態を測定、記述、比較、分析する。第4に事例研究から析出された諸仮説を、定量的研究及び参与観察により検証する、という流れになっている。これまでの研究で、第3段階までの研究を着実に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
市場経済の中でビジネスとして捉えられがちなイベントマネジメントだが、本研究では敢えて音楽祭を無形文化財として捉え、組織知の継承という視点から検討していく。本研究での研究成果は単に学会における理論的貢献にとどまらず、伝統文化が豊富な日本におけるクリエイティブ産業の国際戦略及び国際文化交流に関連する政策提言も含有するものである。 このため平成26年度は、無形文化財の概念の整理とフィールド調査の継続を実施する。具体的にはイギリスで大きな成功を収めているプロムスと国内で短期間に成功を収めた音楽祭を事例研究に加え、基盤研究につながるように研究の統括を図っていく。
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