研究課題/領域番号 |
24653092
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
川上 智子 関西大学, 商学部, 教授 (10330169)
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 病院経営 / アメリカ / トヨタ生産方式 / 経営革新 / 事例研究 |
研究概要 |
本研究は,医療分野における経営革新の成功要因に関する国際研究である。研究期間の2年目にあたる平成25年度は,前年にアメリカと日本で行ったフィールドワークやヒアリング調査に基づき,業務改善手法であるトヨタ生産方式(Toyota Production System)の導入にかかわる組織革新の促進・阻害要因に関する概念モデルを構築した。また,その研究成果を複数の研究会や医療関係者向けセミナーで発表し,フィードバックを得た。 具体的には,まず平成25(2013)年6月には東京で,平成26(2014)年2月には福岡で,それぞれ日本マーケティング学会の医療マーケティング研究会を開催し,研究報告を行った。 平成25(2013)年11月には,Med Change Makersの第1回関西研究会で招待講演を行った。これらの研究会以外にも,昨年,刊行した『1からの病院経営』をテキストとした医療関係者向けセミナーを開催するなど,研究成果の発信に努めた。 さらに,平成25(2013)年6月にはアメリカのシアトルでワシントン大学のMaster of Health Administrationの医療の質に関する講義に参加し,講師を務めていたバージニアメイソン病院のシニアマネジャーから本研究テーマに関する最新動向に関する情報を得た。同年11月には,福岡の飯塚病院で行われたConference for Health Careに出席し,日米におけるTPSの導入事例を対比しながら理解する機会に恵まれた。 以上のように,今年度は研究成果の発信とさらなる改善に向けての情報収集やフィードバックの獲得に力を注ぎ,国内外から有益な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,前年度に行ったフィールドワークやヒアリング調査のデータを分析し,国内外の事例研究を通じて,医療分野における経営革新の促進・阻害要因に関する概念モデルを構築した。収集した大量のデータを独自の概念モデルに整理し,ある程度の仮説を導くことができた点において,研究は順調に進んでいるといえる。 ただし,ブルーオーシャン戦略の枠組みを使う点については,同分野の専門家と議論を重ねた結果,日本の医療分野における適用は難しいという結論に至った。そのため,本研究の理論的な枠組みは,文献レビューに基づき,他の先行研究に依拠する予定である。現時点では,川上(2005)で提示した状況論,あるいはその関連で,近年イノベーション研究で注目されているアクター・ネットワーク理論を適用したいと考えている。 以上のように,研究の進捗に伴い,当初の計画を改善する必要は出てきているものの,医療分野における経営革新を理論的・実証的に解明するという目的は達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成26(2014)年度は,事例研究の成果に基づいて構築した概念モデルを実証するために,病院あるいは消費者(患者)を対象とした質問票調査を計画している。4~8月に既存の概念と尺度の収集と翻訳と調査設計を行い,9月以降に実査を予定している。 また,今年度も引き続き,日本マーケティング学会の医療マーケティング研究会を始め,研究成果を複数の機会で報告し,研究を改善していくためのフィードバックを得て,論文や書籍にまとめていきたいと考えている。 さらに11月には,前年度に引き続き,福岡で開催されるConference for Health Careに参加し,最先端の動向についての理解を深めたい。最終的には定性的な複数事例分析に加えて,日本の医療分野における経営革新の全体像をとらえるための実証研究を行い,多面的な分析を行うことが平成26(2014)年度の目標である。
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