研究課題/領域番号 |
24653093
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研究機関 | 岡山商科大学 |
研究代表者 |
川合 一央 岡山商科大学, 経営学部, 講師 (80330538)
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キーワード | 技術的知識 / 研究開発 / 技術開発 / 科学に基礎をおく企業 / 仕方という形態の知識 / 知的能力 |
研究概要 |
科学に基礎をおく戦後日本の企業(機能性素材化学系企業)における技術的知識の生成過程とその成果を明らかにするべく研究を進めた。その結果としてえられた知見は以下のとおりである。 (1)1970年代半ば、本研究対象企業と同業の外国企業による製品の販売量が世界的に最も多く、これは製品へ転写された技術的知識の総量の差によるものであるという認識が本研究対象企業において共有されていた。しかし同時にこの時期は、同社および日本国内の同業他社が、外国企業によって特許登録された技術を侵害しないまま、同種の製品機能を実現するという代替的な技術的知識や、あるいは外国企業による製品機能を凌駕する技術的知識を生み出すことも可能になり始めた時期でもあった。 (2)職務経験を蓄積するにつれて、設計・製造予定の人工物の機構や作動状況等の推論が構想段階において可能になる分野とは異なり、機能性素材化学系企業における製品としての化合物のばあい、そうした推論は基本的に困難であるため、実際に化合物を作成したうえで、その性質を確認する必要があるようである。この過程で、実験や測定などを通じてえられたデータを元に推定をおこない、物質の反応メカニズムやそれが有する構造を、共通理解が可能な言語に変換して決定することが、機能性素材化学系企業における一つの重要な研究職務の内実だった。こうした能力は、主に入社以前の大学院課程を通じて養成されたものだった。つまり、実験の仕方、実験で得られたデータの解釈の仕方、解釈に基づく言語化の仕方、これらの活動を主体的に遂行する仕方などといった、一連の仕方という形態の知識を習得していた機能性素材化学系企業における研究者は、そうした知的能力を活用して技術的知識の生成という職務を遂行していった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究申請時に調査協力を所諾していただいていたインフォーマント予定者(機械工業系企業所属)が本研究開始年度当初に人事異動となったため、当該人物へのインタビュー調査が困難となった。この状況は2013年度も続き、また別の人物を推薦してもらうことも困難だった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初に予定していた企業に属する研究者技術者にかかわる調査に固執することを控え、申請者が在籍する大学近辺に所在する機械工業系企業を選定し、そこに所属する人物にアクセスしてインタビュー調査を実施し、機械工業系企業における技術的知識の生成過程を明らかにするという本研究計画のもう一方の課題が達成できるよう取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究申請時にインタビュー調査への協力を承諾していただいていたインフォーマント予定者(機械工業系企業所属)が人事異動となって、当該人物および当人に代わって調査に協力してもらえる人物へのアクセスが困難だった。このため調査のために予算計上していた旅費および人件費・謝金・音声記録おこし費用等に影響が生じている現状にある。 2014年度は、上記「今後の推進方策」に記したように、申請者が在籍する大学近辺に所在する機械工業系企業を選定し、そこに所属する人物にアクセスしてインタビュー調査を実施していく。また公表されている文献等の資料を多数閲覧・購入することにより、インタビュー調査等の効率化を実現する。さらに、調査結果をとりまとめて、学会発表および論文投稿を実施する。
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