研究課題/領域番号 |
24653093
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研究機関 | 岡山商科大学 |
研究代表者 |
川合 一央 岡山商科大学, 経営学部, 講師 (80330538)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 技術者 / 作業員 / 定量化 / 技術者と作業員の相互作用 / 仕方の習得 / スキル |
研究実績の概要 |
本年度は,戦後日本のものづくり系企業(機械工業系企業)における技術的知識の生成過程とその成果について研究を進めた。その結果として得られた知見は以下のとおりである。 (1)調査対象は中小企業であるため,高等教育機関出身の技術者たちの全従業員に占める比率が低いことが前提となる。こうした状況で,彼らは新技術の導入,および作業員の有する技能の定量化の実現者としての役割を果たした。特に前者について,技術者達が活動した製造職場は,彼らの入社以前は作業員の技能が支配する職場だった。このため,新技術に基づく機械の導入を実現しうる技能は手作業を通じて技能を形成してきた作業員にはなく,高等教育機関において習得された機械にかかわる知識を有する技術者が主導的役割を果たすこととなった。 (2)技術者による上記取り組みは,作業員の技能として育成し継承すべき職務が何かを組織および個々の作業員に認識させる一方,組織全体として,人工物にかかわる設計情報創造の高度化をもたらす契機となった。 (3)上記の技術者による取り組みの結果,彼らがいなければ組織に生じなかったであろう,作業員の技能形成過程が生じた。つまり生産技術開発という,作業員の技能が支配的だった職場になかった職務が遂行され始めると,新職務に作業員が従事することを要請されるようになった。その結果,作業員は,技術者との交流を含めた学習プロセスを経験し,技能や作業対象としての人工物に生じる現象の科学的原理を用いた理解の仕方,自らの思考過程を工学等で用いられる言語にて表現する仕方を習得することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの遅れについて,申請者が在籍する大学近辺に所在する機械工業系企業へのアクセスが可能となり,一定の成果としてとりまとめることができた。 他方で,機能性素材分野化学系企業について,中等教育機関出身の作業員経験者に新たにインタビュー調査を行ったところ,高等教育機関出身の技術者の有するスキルとの明確な差異を確認しえなかった。このため,機械工業系企業と機能性素材分野化学系企業の比較分析等が可能となる段階に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
機能性素材分野化学系企業に属した高等教育機関出身の技術者および中等教育機関出身の作業員にたいして,さらなるインタビュー調査の実施する。それを通じて,それぞれの役割とスキルの差異を厚い記述によって明確にし,とりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
機能性素材分野化学系企業における研究開発部門メンバーのスキルの内実および組織内相互作用プロセスを明らかにし,論文を作成する予定だった。このため,同企業に属した中等教育機関出身の作業員に対して新たにインタビュー調査を行ったところ,高等教育機関出身の技術者の有するスキルとの明確な差異を確認しえなかった。このため,再度のインタビュー調査を実施する以前に,公刊された情報に基づくさらなる予備調査が必要と判断した。こうしたことからインタビュー調査のための費用等の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
機能性素材分野化学系企業に属した高等教育機関出身の技術者と中等教育機関出身の作業員に対してインタビュー調査を行う。それをふまえて,機械工業系企業における技術者と作業員のスキルと組織内相互作用との比較分析等を行い,成果としてとりまとめる。
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