研究課題/領域番号 |
24653103
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
菅 万希子 帝塚山大学, 経営学部, 講師 (10612989)
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研究分担者 |
加納 圭 滋賀大学, 教育学部, 講師 (30555636)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医療観光 / ウェルネスツーリズム / 潜在ニーズ / 日本ブランド / 観光資源 |
研究概要 |
【研究の成果】本研究の目的は、日本の医療観光の学際的体系化のために、まず主なターゲットである中国の潜在ニーズを発掘することである。特に医療観光のキーワードである医療を、病院ではない、湯治や漢方、美容を資源としてとらえる試みに特徴がある。 平成24年度の計画では、中国ブランドデータを俯瞰した上、中国の富裕層にグループインタビューを行う予定であったが、予定通り進捗させることができた。 【具体的な内容】グループインタビューの結果は、日本では、低価格の温泉(特に湯治)が現れているが、中国の観光は予算が高いことがわかった。また、「日本の資質は高い」という発言が繰り返され、日本のホスピタリティの質の高さについての指摘が多かった。温泉そのものに対するニーズはあるが、湯治に対しての認知はそれほど高くない可能性がある。化粧品については、サプリメントとして併せて観光庁の資料からお土産として購入率が高いことがわかるが、日本に対する医療観光ニーズについお土産として手ごろ感があることが大きな理由であると推測され、他には①中国の化粧品市場の海外志向、②中国化粧品産業が発展途上、であると考えられる。一方中国の旅行代理店(国営、民営)の立場から、温泉に関するニーズはあるものの、娯楽の要素が高く、ヘルスケアに役立つという理解はまだ浸透していない。また、時期的な課題から、国営旅行代理店は若干日本観光全般にネガティブな意見がみられた。民営では、日本の観光のプロモーションに対し、中国側は受け身にならざるを得ないとの指摘があった。 【意義・重要性】日本の資質の高さの指摘には、製品の品質の高さも含まれている。温泉や漢方など、日本人の認識する健康に対する国内資源は豊富であるが、今年度の調査では、中国での認知が低いのではないかと考えられる。次年度の潜在ニーズの発掘では、新しい日本の医療観光の定義を提案できるものとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画に基づき、中国の大量ブランドデータを俯瞰し、グループインタビューの設計、実査を行うことができた。 グループインタビューでは、中国の富裕層を抽出し、観光ニーズについて聞き取りを行った。その中で医療に対するニーズ、健康に対するニーズ、漢方薬や温泉などに対するニーズの確認、発掘を行い、キーワード「家族旅行」「高い品質サービス」「高価格」「温泉」「安全という視点からの健康・医療」などが明らかになった。 一方、旅行代理店についても国営、民営に対し、聞き取り調査を行い、それぞれの立場から観光への取り組み方の違いも推測することができた。国営では、やはり国の施策の影響を強く受けるが、民営では、比較的消費者ニーズに関心が高いと思われた。しかし、どちらの旅行代理店でも医療観光のニーズがあるとは現在考えていなかった。医療観光は治療や健診のイメージが強く、ウェルネスも観光の中でごく自然に存在するものであり、特に意識的に目的化して訴求しようという動きはみられない。よって、もし、中国の消費者にニーズがあるとすれば、完全にそのニーズは潜在化していると考えられる。 潜在ニーズの発掘のための調査設計には、化粧品や湯治や漢方薬の日本の差別化のポイントを具体的かつ詳細に説明することにより、定量調査でのニーズ発掘の可能性が高くなると考えている。特に、製品でも実は日本製がほしいのであるが、生産は日本ではなという点の指摘があり、日本のブランド力をどのように訴求できるかという点からも調査を行う必要があると考えている。 以上が、平成25年度の定量調査の設計にインプット可能な仮説の概略である。詳細は、質問紙が参照される。研究の現在までの達成度はほぼ予定通りであり、特に進捗が遅れている点はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の調査結果をうけて、平成25年度では日本にむけて中国観光意向をもつ富裕層対象者に、定量調査を行う。 具体的には、潜在ニーズの発掘のための調査設計を行う。先述のように、化粧品や湯治や漢方薬の日本の差別化のポイントを具体的かつ詳細に説明するつもりである。それによって、定量調査でのニーズ発掘の可能性が高くなると考えている。特に、製品でも実は日本製がほしいのであるが、生産は日本ではなという点の指摘があり、日本のブランド力をどのように訴求できるかという点からも調査を行う必要があると考えている。 そのためには、日本の観光資源にどのようなものがあるか、さらに幅広く捉えなおすことも求められる。一例をあげると非常に軒数の多い鍼灸整骨院はどう考えることができるのか。鍼灸は日本から中国に学びにいくことが多く、日本の鍼灸整骨院の評価は高くないと捉えられているのか、日本の資質の高さという言葉から、実はそうではないのか検証していきたい。まず資料を調べ、必要があれば関係者に聞き取り調査も行いたい。 平成25年度では、このように平成24年度の仮説をもとにさらに幅広くとらえ、中国国内の富裕層に対し、質問紙調査をインターネット上で行う予定である。 具体的な質問紙設計では、潜在ニーズ発掘を目的としているので、中国で認知されていない観光資源について日本の資質の高さというキーワードを訴求した説明を行いたい。医療観光資源としての項目の中心は、ウェルネスに関するものであるが、西洋医学も比較のため項目に加えたいと考えている。それらの結果を統計分析するにあたり、併せて24年度俯瞰した中国のブランド志向が、調査結果の医療観光の資源に関係するかについての分析も可能な範囲で行いたい。 これらの結果から、従来日本で考えられていなかった医療観光領域の体系化へ資することを目的とした研究としての調査分析を試みていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
①平成24年度の定性調査をふまえ、中国での定量調査(調査会社パネルデータ使用費、翻訳費) ②資料調査(書籍、資料費) ③国内資源調査(交通費等) ④その他(分析ソフト等)
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