研究課題/領域番号 |
24653104
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤邉 紀生 京都大学, 経営学研究科, 教授 (80278481)
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キーワード | 臨床会計学 / 知識生態系 |
研究概要 |
臨床会計学の基本コンセプトの内包と外延について、企業再生を支援する臨床会計実践者による具体的事例を通じた議論を、臨床会計学ワークショップとして実施し、その内容を分析した。臨床会計学ワークショップは、事業生態系の観点から、地域経済のキーストーン的な役割を果たしている地域金融機関と地場の監査法人・会計事務所からの参加を得た。ワークショップでは、企業再生の具体的事例の紹介をもとに、臨床会計の専門家の役割について相互に議論してもらう形式をとることによって、理論的一般性と実践的具体性のバランスを実現を心がけた。その結果、会計専門家の持つべき知識・能力・人格について、一定の合意が見られるものの、伝統的な「会計学」の範疇におさまるものではないことが判明した。具体的には、経営計画の立案・実行・検証・修正というPDCAの質的改善をいわばコアテクノロジー中心として臨床会計の実践者は共有しているものの、戦略的構想能力に重点をおく立場もあれば、現場能力の改善に重点をおく立場もあるというふうに、臨床会計の内包の多様性が確認できた。臨床会計学ワークショップで得られた知見を、臨床哲学のフレームワークを援用して整理し、臨床会計の専門家の活動の特徴を,(1)固有な有機的世界への弁証法的な関わりを主体的に担っていること、(2)臨床会計の専門家が距離があるところから分析指導するのではなく現実に現場にたって問題を共有するという意味での身体性と、会社の問題を経営者だけでなく現場の従業員とも共有していくという意味での身体性、という二重の身 体性を呼び起こしていること、(3)管理会計が管理する会計だけでなく管理される会計でもあるという再帰的関係を持っていることを認識しつつ進められていること、として抽出すると共に,これらの特徴が管理会計実践にどのように影響しているかアクションリサーチの可能性と関連づけて分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床会計学ワークショップの成果をまとめ,それをアクションリサーチの可能性と結びつけて検討出来たことで,おおむね順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
臨床会計学での議論の成果についてさらに分析を進め知見をまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
論文校閲のタイミングがずれたたため 論文校閲費に充当する予定である。
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