自治体監査の統合的フレームワークを開発するには数多くの知見と実務の先進事例を統合する必要がある。自治体すなわち「地方の知恵」を見つけようとしても一自治体・一地域では限界がある。この時、職員ネットワークを活かすことで、「知恵」やノウハウは何倍にもなる可能性がある。このことは新しい監査のフレームワークを構築する場合にも同様である。これに関して、今年度で第9回大会を迎えた全国都市改善改革実践事例発表会もまた、自治体職員手作りの職員ネットワークの一つである。 ここに集う自治体関係者に対しては「あなたはなぜこの発表会にわざわざ有給休暇で、私費参加するのですか。しかも、ボランティアで事務局のサポートまで」という質問は愚問なのである。自治体職員としての職業を遂行するうえで多くの知己と情報を入手くできるから、楽しいから、そして、自分がそこにいたいから参加しているわけで、そこには真剣に考えるほどの理由は存在しないようにも思える。 石破茂地方創生担当相のもとで内閣府大臣補佐官を務める伊藤達也衆議院議員は、この9月まで関西学院大学大学院経営戦略研究科教授として研究代表者の同僚であった。伊藤教授と研究代表者は、「地方の知恵」を特に監査の視点で導出するに当たっての職員ネットワークの重要性と、その「知恵」を相乗させる手法、さらには、職員に対処する幹部の姿勢などについて議論した。そこで出た一つの結論は、外部の自治体関係者と積極的に交流を図る一人ひとりの自治体職員を、その役所がどのような形で支援をしていくかが、これからの課題ということであった。このことは特に監査において重要な問題である。究極的に伊藤教授との結論で研究代表者が実感したのは「部下が職員ネットワークを形成することを大いにほめたたえる監査部門における幹部職員の存在」が公監査フレームワークの開発には不可欠であるということであった。
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