研究課題/領域番号 |
24653115
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
王 智弘 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (60614790)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 資源 / 環境 / 統治 / ガバナンス / 住民運動 |
研究実績の概要 |
本研究が研究対象とする近年の漁業者による植林運動や森林保全活動を、自然環境や天然資源の統治に対する住民の抵抗として位置付けるために、代表的な公害問題の構図と比較・分析を行った。具体的には、河川・沿岸域で発生した資源開発の問題として、明治期の近代化の過程で渡良瀬川流域に被害を及ぼした足尾銅山鉱毒事件と、高度成長期の三島市・沼津市・清水町の石油化学コンビナート建設反対運動を取り上げた。足尾銅山鉱毒事件では、田中正造を中心に、また、静岡県の石油化学コンビナート建設反対運動では、地元の高校の理科教師を中心に、多様な職業や立場の参加者との協力関係が築かれていたことがわかった。その際、公害の被害はもちろん、被害が生み出される社会的構造への理解と問題の共有のための尽力が、特定の天然資源などに限定された関心や職業、思想の垣根をこえるための鍵となっていたことは、「森は海の恋人」という考え方を打ち出した結果、地域住民も参加する植林活動へと展開した漁業者による植林運動と共通していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
調査対象が宮城県の被災地域と漁業者を含み、フィールド調査には慎重な配慮が必要なことから、まず、文献調査や資料収集を通じて歴史的な位置付けを明らかにし、事例の意義を考察することを優先した。開発に反対する漁業者の活動を、公害に対する代表的な住民運動と比較・分析した結果は、2014年に出版された『臨床環境学』(名古屋大学出版会)の中で「環境問題をめぐる住民運動」として発表することができた。しかし、天然資源の統治に対する住民の抵抗にみられる日本的な特徴という捉え方については、フィールドワークを通じた地域社会のより深い理解に加え、さらには日本文化論的な視点からの民衆運動の再検討や海外事例との比較など、広範な学問領域にまたがる、時間を要する分析・検討作業が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に配分するエフォートを増やすために、業務・研究計画全体を見直す。また、調査対象地の復興状況を慎重に判断しながら可能な限りフィールド調査を実施すると同時に、海外における環境運動の情報収集を含め、比較対象や参照事例の変更・追加の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査地として計画していた宮城県気仙沼市が東日本大震災で甚大な被害を受け、復興の進捗を考慮しながら調査実施の可能性を検討していたが、復興の遅れや被災地における「調査疲れ」が指摘されていることからも実施が困難であった。また、当初インタビューを予定していた重要なインフォーマント(調査事例における中心人物)が逝去されたことから計画に再検討の必要が生じたため未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
調査地の状況を慎重に判断しながらフィールド調査の機会をうかがう。同時に、海外における参照事例の情報収集を含め、調査・検討対象の再検討を行う。主に過去の期間に遂行できなかった調査旅費として使用し、また、日本における民衆運動の先行研究や日本文化論に関する資料の購入にも使用する。最終年度であることから、国内外での研究会、学会発表のための移動費として使用する。
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