本研究の調査対象地である鹿児島県屋久島町で、1960年代から70年代にかけて展開された森林保護をめぐる住民運動にかんして、当時、国有林野事業に反対した中心人物たちに聞き取りを行った。また、当時の漁協関係者から住民運動に対する集落の反応や空気について聞き取りを行った。町議会議事録などの記録と合わせて、国家による資源統治への地域社会の抵抗の戦略について分析した。 他方で、80年代後半から全国に展開した漁業者による植林運動にかんして、北海道漁業協同組合の婦人部による植林運動の仕掛け人だった人物の足跡、人となりや運動戦略の有無を知るために、資料の収集および北海道ぎょれんで関係者に聞き取りを行った。 以上の研究活動から、環境保全を目的とした住民運動における森と海の社会的つながりの影響、また、資源の統治に対する抵抗の戦略や言葉に、風土に支えられた発想やレトリックの存在を確認することができた。
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