第一に、社会学の下位分野間で引用作用がどのように異なるかを分析し、論文にまとめた。ルーマン研究、在日研究、女性労働研究に該当する論文で1990~2009年に出版された論文をサンプリングして、どのような文献を引用しているかを調べた。仮説としては、女性労働研究がもっともハードサイエンスに近く、ルーマン研究がもっともソフトである(そして在日研究は両者の中間)と考えられたので、女性労働研究が、新しい論文、英語の論文、雑誌論文、同分野の論文を最も引用しやすく、ルーマン研究はこれらを最も引用しにくいと考えられた。分析の結果、確かに女性労働研究は上記のようなタイプの論文を最も引用しやすい傾向があったが、ルーマン研究と在日研究の差異は明確ではなく、場合によってはむしろルーマン研究のほうがハード・サイエンスに近い特徴を示す場合もあった。 第二に、日本、英国、米国の主要な社会学雑誌(各国2誌ずつ)に2012年に発表された論文で用いられた方法と、それらの論文で引用された文献のタイプについて分析を行った。米国がもっとも漸進主義的(データにもとづき、専門家同士の相互批判・了解を通して漸進的に学問を発展させていこうとする志向)で、日本が最も漸進主義的ではなく、英国が日米の中間という仮説を立てて分析を行った。分析の結果、米国が顕著に漸進主義的な特徴を示していたが、英日の差異はそれほど明瞭ではなく、特に論文で用いられている方法の分布に有意差はなかった。 第三に、日本の社会学者のネットワークを分析するために科研費の研究分担ネットワークのデータを構成した。データは現在クリーニング中である。
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