日本、英国、米国の主要な社会学雑誌(各国2誌ずつ)に2012年に発表された論文で用いられた方法と、それらの論文で引用された文献のタイプについて分析を行った結果を論文にまとめて投稿した。またこれに対するレフェリーの審査結果をもとに論文の改訂をすすめた。米国の社会学がもっとも漸進主義的(データにもとづき、専門家同士の相互批判・了解を通して漸進的に学問を発展させていこうとする志向)で、英日の差異はそれほど明瞭ではなく、特に論文で用いられている方法の分布に有意差はない、という結論に変わりはないが、理論的なフレームワークの妥当性についてレフェリーから疑義がでたため、この点に関して既存の文献をさらに調べ、理論的な基礎づけをさらに固めた。 また、数理社会学の動向について、Web of Science のデータを使って概観した。数理社会学関連の雑誌のインパクトファクターは社会学関連雑誌の平均的なインパクトファクターとほぼ同じである。この10年ほどの間に社会学関連雑誌のインパクトファクターの平均値は微増の傾向で、数理社会学関連雑誌もほぼ同様であった。しかし、学際性の強い Social Networks 誌は例外で、際立ってインパクトファクターが高く、その増加率も高かった。計量社会学関連の雑誌のインパクトファクターも高く増加率も顕著なので、そのような計量社会学の隆盛が Social Networks 誌の例外的な傾向と関係あると考えられる。こういった傾向を踏まえ、今後の数理社会学の発展のためには、データ分析との接合をさらに強める必要があることを論じた。 さらに、統計学と社会学の関係、日米の社会学の温度差について概説した小論を出版した。
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