研究課題/領域番号 |
24653117
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川端 亮 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00214677)
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研究分担者 |
稲場 圭信 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30362750)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 社会学 / 宗教学 / 宗教性 / 利他主義 / ボランティア |
研究概要 |
本研究では欧米での多くの研究例はあるにもかかわらず、日本では宗教(とくに新宗教)への偏見からか従来取り上げられることが少なかった「宗教性」と「利他主義」に注目し、質問紙による調査を行い、ボランティア活動の規定要因を明らかにし、日本国内にとどまらず、海外の国と比較研究できる基盤の構築を目指す。そして、人々の社会意識、地域活動と教育の観点から、より多くの人が積極的にボランティアを行う成熟した「思いやり・助け合い社会」を作っていくにはどうすればよいかという実践的な課題に答えることを目的とする。 平成24年度は、調査票を作成し、質問紙による調査を行った。調査項目は独立変数群と従属変数群からなる。従属変数群であるボランティア活動は、市民活動や自治会・町内会でのボランティアや高齢者や障がい者への手助け、募金や寄付などに関してその頻度を尋ねた。 独立変数群は、性別や年齢からなる社会階層要因、家族や友人知人とのつきあい、近所つきあいからなる社会関係資本の要因、文化的側面の3つの側面から構成される。本研究で特徴的な変数群は、文化的側面に含まれる。聖なる力、報恩感謝などからなる国際的に普遍的な尺度として通用する宗教性、利他主義のほか、共感性や信頼感などに関する価値観などからなる。国際的に普遍的な宗教性については、日米それぞれ300人程度のオンライン調査データをDIF分析と多母集団同時分析において、「聖なる力信仰」、「報恩感謝」、「生命主義的世界観」の3次元からなる「普遍的宗教性」が日米共通の宗教性として抽出されており、それを利用した。その他に祖先の人との心のつながりなど、日本的な宗教性も含まれている。 調査は、性別、年齢、地域を全国統計に近似するように割り当てた上で調査会社のモニターの中からランダムにサンプルを選び、郵送により調査を行った。1,474票が回収され、データのチェック等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調査票作成にあたり、研究分担者、研究協力者の協力の下、関連する過去の調査票も入念に調べ上げて、繰り返し検討し、分かりやすい質問文で理解しやすい流れの調査票を作成することができた。また、委託した調査会社の作業の進め方も予想以上に優れていた。その結果、当初の想定していた1,000よりも5割近くも多い回収数に結びついたと考えられる。より質の高いデータで、当初の計画よりの1.5倍のデータが得られたことは、当初の予想以上であり、当初の計画以上に質の高い分析ができ、当初の予想以上の成果が得られると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施した調査データの分析を行い、関連する分野の研究者を交えて、その結果を検討し、その学術的成果を発表する。その際の分析視角は、 A.社会階層、社会関係資本、宗教の3側面からなるボランティア活動の規定要因モデルは、欧米の実証的研究においては当てはまっているが、日本においては、宗教性の測定に問題があるため、よく適合するよいモデルとはいえない。神も仏も存在する多神教的な日本においては、キリスト教的一神教的伝統の欧米諸国と異なるため、欧米で作られた質問文で「宗教性」を同じように測定することは難しい。本研究では、キリスト教のような絶対的な超越ではない、聖なる力や霊への信仰、報恩感謝や信仰による心の安らぎ、人と宇宙の一体感、死んだ後に大生命にもどるなどからなる弱い超越性と倫理的側面を含む宗教性を構成し、ボランティア活動との関連を明らかにする。 B.この「宗教性」は、日本特有のものではなく、キリスト教を中心とする欧米の人々にもみられる宗教性である可能性が高く、もしそうならば、日本と欧米を同じ尺度で測定できる「普遍宗教性」となり、ボランティア活動の国際比較研究に大きく貢献することができる。 これらの学術的成果を踏まえて、教育における宗教の取り上げ方、地域活動における宗教の役割に対する人々の見方、日本社会における宗教の位置づけを再考する。教育の場におけるボランティア活動、「生きる力」、「宗教的情操教育」と結びつけるなどの実践的な提言を考える。 さらに将来的には、宗教性とボランティア活動の国際比較研究を立案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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