研究課題/領域番号 |
24653121
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
水野 かほる 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (90262922)
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研究分担者 |
高畑 幸 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (50382007)
森 直香 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (60611829)
坂巻 静佳 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (10571028)
津田 守 大阪大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50163811)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 司法通訳 / 法廷通訳人 |
研究概要 |
本研究の目的は、司法通訳人の人材不足という問題に対し、司法通訳人の就労環境の整備、及び司法通訳を使用する法曹三者らの手続きの進行方法と日本語の運用技術の改善という現実的方策を提案することにある。そこで、本研究においては、社会学、言語教育及び法学という異なる分野の専門家が連携し、司法通訳人の負担軽減というこれまでにない新たな視点から、司法通訳の円滑な運用と制度構築のための実践的方策を提案する。 平成24年度は、予備的研究として、法廷通訳人が感じる負担は何か、それを軽減するためにはどのような制度的配慮が必要なのかを明らかにし、その改善に向けた提案をすることを目的として、、平成24年12月~25年1月末に法廷通訳人に対するインターネットを利用した量的調査を実施し、101人から回答を得た。調査結果からは、回答者は「日本国内外で語学を習得した高学歴の40代」の女性が多い高学歴の語学の専門者集団であることが明らかになった。法廷通訳人を志した動機としては、「能力を生かしたい、社会貢献をしたい」という意見が最も多く、また、法廷通訳をやりがいがある仕事と感じながらも、通訳翻訳業務の過程で大きな疲労や心理的負担を感じていることや通訳報酬への不満、法曹三者の発言のどこに訳しにくさを感じるか等が明らかになった。調査結果は紙媒体とPDFで公開し、またアンケート回答者を対象に報告会を行った。 以上のように、本研究では、法廷通訳人を対象とした日本で初めての量的調査を行い、法廷通訳人が抱える心理的物理的負担をデータの形で明らかにした。通訳人の負担を客観的な形で示したことの意義は大きく、今後の司法通訳人の負担軽減を目指した研究を実行する上でも大変意義があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、司法通訳人の負担軽減という新たな視点から、司法通訳人の円滑な運用と制度構築のための実践方策の提案を目指す。平成24年度の研究実績としては、その研究実施計画に照らして、ほぼ当初の目的を達成できたと考える。理由は、以下の通り実施計画として掲げた大部分を実施することができたからである。本研究では、法廷通訳人を対象とした日本で初めての大規模な量的調査を行い、法廷通訳人が抱える心理的、物理的負担を数的データの形で明らかにした。通訳人の負担を客観的な形で示したことの意義は大きく、今後負担軽減を訴えていく上でも大変有意義である。 (1)法廷通訳人に対して、就労実態、就労環境と運用、通訳しやすい・通訳しにくい日本語について等を調べるインターネットを利用した量的調査を実施し、調査結果を報告書、PDFで公開した。 ・高畑幸・水野かほる・津田守・坂巻静佳・森直香『2012法廷通訳の仕事に関する調査報告書』静岡県立大学法廷通訳研究会発行、2013年3月 ・静岡県立大学図書館・機関リポジトリ (2)上記調査の報告会を兼ねた研究会を開催し、アンケートの回答者である法廷通訳人と研究者との問題意識・知見の交換と共有を行った。 (3)裁判員裁判導入後の司法通訳制度の抱える問題を概観し、以下の論文にまとめた。 ・水野かほる「近年の司法通訳をめぐる状況と課題」『国際関係・比較文化研究』第11巻第1号、2012年、pp.21-36 (4)関連の文献調査を実施した。 (5)ソマリア海賊の国内裁判及び要通訳事件の裁判を傍聴調査した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究実施計画は次の通りである。 (1)前年度に引き続き、文献調査を継続して実施する。 (2)前年度実施した法廷通訳人に対する実態調査について、その単純集計と自由回答の結果について、静岡県立大学国際関係学部紀要で報告する。 (3)上記調査から得られた課題についてより深く探究し考察するため、以下の研究を進める。 (a)司法通訳人に対する研修や資格認定について、その意義やあるべき姿を考えるため、文献調査及び当該分野に詳しい専門家からの情報等により海外事例研究を行う。 (b)通訳の際の起点言語の選び方が通訳行為に与える影響等に関して、司法通訳人に対するインタビュー調査及び検証実験を行う。 (4)研究成果をまとめて論文や報告書等で公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究費では、予定していた消耗品購入の手配が間に合わなかったため、わずかではあるが繰越金が生じた。平成25年度は上記繰越金を合わせて以下のように使用する予定である。 (1)関連図書資料の購入。 (2)学会・研究会参加のための旅費、交通費。 (3)調査協力、専門情報提供等に対する謝金。 (4)データの入力作業等に対する賃金。 (5)文具、USB、コピー用紙等消耗品購入。 (6)通信費。 (7)報告書作成費。
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