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本研究の目的は、近年重要な社会的課題として注目を集めている、高齢者の社会参加によるアクティブ・エイジングの実現（課題１）と、離農・耕作放棄地の増大とその対策（課題２）に対して、２つの「問題」の困難性ではなく、両者の「潜在能力」を生かした解決策を示すこととした。研究期間内において、愛知県名古屋市、長久手市、日進市、および千葉県柏市、神奈川県横浜市における、耕作放棄地を利用し、高齢者を中心とした農の活動の事例分析を行った。また、2014年度では、名古屋市、日進市の市民農園利用者に対する調査票調査を実施した。
ここでは、特に都市の農の活動の主体として、非農業者が都市の農の活動に参画することで、いかに新たな共同性が構築されるかが重要な鍵となり、その仕組みづくりが重要な意義を持つことが明らかとなった。既存のコミュニティの基盤の強さを担保に内発的な力を展開させるという方向性ではなく、外部資源、地域外の主体を組み込み、外部に開かれたコミュニティ活性化につなげるという道筋である。こうした観点からすれば、農村ではなく、都市の農の活動ならではの強みを生かす点も見えてくる。都市に集積する様々な団体との新たに形成されるネットワークの強みである。そして、こうした共同性の基盤を作るのは、区割りの市民農園ではなく、共同耕作という形態にある。それは、個人の所有地ではなく、共有の土地で営まれることにより、新たな共同性を作り出す契機となるためである。耕作放棄地を有効利用し、定年退職者が中心となって活動し、様々な社会的ニーズを満たし、多様な事業化を進めるというあり方は、プライベートな趣味の活動を超え、農の活動を媒介として、地域社会の様々なニーズをつないでいくという、都市の「市民農業」の大きな社会的可能性を示すものと見ることができる。
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