研究実績の概要 |
島嶼性と辺境性をもつ沖縄県における児童虐待の発生予防に有効な、新しい「地域」の創造のために、スペインの同様の地域特性をもつカナリア諸島をにおける現地調査を実施した。その際、基盤的な研究ネットワークとして、バルセロナ自治大学の研究グループである「Childhood, Family and Comparative Social Policy」(代表:Lluis Flaquer社会学部教授)との研究協力関係を強化することができた。 カナリア諸島においては、基本的に本土よりも親族間のつながりが強いが、食生活や食文化の「乱れ」も有するネグレクトの子どもたちへの影響が大きい可能性が示唆された。また、Aldeas Infantiles Gran Canariaの実践は一つのモデルとなる。このNPO実践では、島嶼という限定された地域内の専門機関どうしの緊密な関係を基にしたNPOと公的機関の協働がなされ、同一のNPOが予防サービスや保護サービス、家庭復帰サービス等をすべて提供することでの効果を発揮している。自然教育等も活用しながら展開している点も特徴の一つであった。この実践に関しては日本児童養護実践学会において発表を行った。 このような現地調査等を経て、改めて「地域」や「予防システム」を支える「人」の重要性が浮き彫りとなった。特に児童虐待分野ではかかわる人材がバーンアウトとなる可能性も高く、そのような人材をどのようにサポートするかが重要な課題である。この解決の ための一つの方法として、TRE(Trauma Release Exercises)の有効性に着目し、具体的技法やその効果等について検討を行い、申請者自身がそのプラクティショナーとしての資格を取得し、児童養護施設職員を含む心理的サポートを行う専門職や島嶼地域の住民を対象としたワークショップを開催し、その有効性に関する検証を行った。
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