研究課題/領域番号 |
24653142
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
山岸 映子 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (50347358)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 里帰り分娩 / 周産期ケア / 母子保健サービス / 過疎地域 / 地域支援 |
研究概要 |
里帰り分娩とはわが国独自の慣習として、分娩およびその前後の期間を産婦の生家(実家)で過ごすことをいう。多くは、妊娠30~35週程度で里帰りし、出産後1~2ヵ月滞在し、自宅に戻る。わが国の出産形態において里帰り分娩はかなりの割合を占めているにもかかわらず、市町村実施の母子保健サービスが地域住民を対象としているため正確な実態は把握されていない。 里帰り分娩のメリットは実母からの身体的や心理的援助が得られることであり、デメリットとしては妊娠末期および産褥早期の移動による母子への負担、周産期ケアの継続性や一貫性の欠如、施設についての情報およびコミュニケーション不足、産科学的な異常がやや高く、異常が生じた場合夫(パートナー)不在による対応の遅れ、夫分離による新しい家族としての役割獲得や調整の遅れ、自宅へ戻った後の適応困難、実母によるネガティブな影響を及ぼす支援などがあげられる。 妊娠と出産に関する安全性と快適さの確保において里帰り分娩のメリットを生かしデメリットに対応した、継続的母子保健サービスや社会支援が不可欠である。特に過疎地域では、出産の多くを里帰り分娩が占めている。本研究ではわが国の過疎地域における里帰り分娩に対する母子保健サービスや地域支援の実態およびニーズを明らかにするとともに、里帰り分娩に対する妊娠、出産および子育て支援が、自宅や里帰り先それぞれの地域や医療機関の連携のもとに継続して受けることができるシステムを開発することを目的とする。 当該年度においては、過疎地域における里帰り分娩に対する母子保健サービスと社会支援体制の実態調査と平成26年度にかけての石川県内の過疎地域における里帰り分娩対象者へのニーズ調査を予定していた。現在文献的知見をまとめ、過疎地域の市町村対象地域についての入力を終えている。調査票作成について遅れており現在作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度実施予定の過疎地域における里帰り分娩に対する母子保健サービスと社会支援体制の実態調査および石川県内の過疎地域における里帰り分娩対象者へのニーズ調査における調査表作成の遅れについては、文献的知見の整理および現在実施されている母子保健サービスの新生児訪問や2007年から開始された全ての母子を対象とした「こんにちは赤ちゃん事業」(生後4ヶ月まで全戸訪問事業)および母子保健推進員等についての情報を加味した内容の検討に時間がかかったためである。また大学の国際貢献事業としてJICAベトナム青年研修(母子保健管理)受け入れ担当者として相当の時間がとられ、研究に費やす時間があまりとれなかったこともある。 これまでに、里帰り分娩をする妊婦の割合は、文献により8~37%と大きく差が認められ、1980年代の全国調査等では15%程度と推測されている。新生児訪問時および出産後6ヵ月時の里帰り分娩者に対するEPDS(エジンバラ産後うつ病スケール)得点は低く、産後うつ病になりやすい母親はソーシャルサポートが少なく、夫や家族との関係や周囲と孤立した生活等の影響が考えられ、新生児訪問に対するニーズは高い。不安の出現時期は退院後1ヶ月以内が最も多く、不安の内容は母乳栄養に関することや児の皮膚トラブル、経産婦特有の不安、実母の援助スタイルによる母親の不安が上げられ、夫の家族役割獲得についての遅れなども明らかにされている。 今年度は早急に調査票を完成させ、H24年度実施予定を実施するとともに25年度実施計画を遂行していくことになるが、遅れを取り戻すことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度実施予定であった過疎地域における里帰り分娩に対する母子保健サービスと社会支援体制の実態調査および石川県内の過疎地域における里帰り分娩対象者へのニーズ調査(~26年度まで)に平成25年度実施予定の過疎地域産科医療施設での里帰り分娩に対する調査票による実態調査を実施予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、平成24年度実施できず繰り越された研究費および平成25年度分の研究費について、研究計画申請内容どおり実施予定であり、研究費も主に調査票の郵送費および調査実施のための旅費、データ入力、資料整理等計画内容どおりに使用予定である。
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